都道府県連合パズル・ゲーム研究室

パズルやゲームに関する研究結果をアップしていく予定です。

グレートウエスタントレイル:基本戦略考察6【デッキ強化と出荷】

今回は、デッキ強化と出荷に関するお話です。


相関図【デッキ強化と出荷1】


グレートウエスタントレイルのゲームシステムにおいては、デッキ強化は明確に出荷にのみ関連しています。手札の育種価をカウントするのは、出荷のときだけですから。ここで、デッキの強さの定義は「(デッキの育種価合計)/(デッキ枚数)×(手札枚数)」としておきます。つまり、手札に来るカードの育種価合計の平均値です。正確には手札に同じ色の牛が被ってしまうとより弱くなりますが、そこは議論の大勢に影響しないためいったん無視します。

話の流れとしては、出荷の目的を考察したのちデッキ強化の手段について考えていきますが、その前に一つ大事な点に言及しておきます。それは、グレートウエスタントレイルにおいては「デッキ強化(出荷)はゲームの一部に過ぎない事」です。相関図を見ていただければわかるように、他の要素もたくさんありますね。

これは特に先入観のない方にとっては当たり前の事かもしれませんが、世の中にはデッキ強化が大きなウェイトを占めるカードゲーム(例.ドミニオン)も多いと思うので補足しています。グレートウエスタントレイルの場合は違いますよ!・・と。デッキ強化だけ完璧にやっても、勝つのは困難です。要は、以下の話もあくまでゲームの一部・・ということです。


では本題に戻って、出荷の目的について考えます。ゲーム盤を見てみると、カンザスに近い都市にはマイナス点が付いているから出荷してもあまりおいしくない・・ということは、すぐにわかりますね。カンザスも序盤の6コインは貴重ですが、度々置いてマイナス6点を重ねているようだと大きなハンデを背負ってしまいます。実際、メリットが大きくなるのは価値10以上の出荷です。その前提で目的を整理すると、次の (1)~(3) になるでしょうか。

(1) 収入を得る(※1
(2) 黒い枠のマスにあるディスクをはずす
(3) 得点を得る


(1) の収入は、継続的に得て発展していくためにも大事です。(2) のメリットは大変大きく、拡大再生産に重要な役割を果たします。(3) の得点は前回の記事でも紹介したように、比較的高めです。

ただこの中で、他で代用が利きづらいのは (2) です。黒枠マスのディスクは一応駅でもはずせますが、かなり遠いですから。(1) は多かれ少なかれ一定量入るのであまり意識する必要がなく、(3) も勝つのに必須なほど高いわけではありません。

黒枠マスについては、最初に強化することの多い手札枚数と移動数だけざっと解説します。相関図上では省いておりますが、手札枚数はデッキ強化につながる要素です。手札が増えれば、育種価合計の平均値も増えますから当然です。一度手札枚数を増やすと次の出荷が楽になり、さらに遠くへと出荷しやすくなります。一方、移動数は相関図上だとアクション強化につながる要素だと考えます。新たに建物を建てて踏めるアクションを増やしているわけではありませんが、移動数を増やすことで弱いアクションしかできない地点で止まる必要がなくなり、アクションの効率性が増すからです。戦略による差こそあれ、どちらも大変強力な効果です。


ここまでの議論をまとめると、出荷の目的の中で最も重要なものは「黒枠マスのディスクの解放」です。そのためには価値10,12辺りの都市になるべく早く到達する必要があり、それが序~中盤の当面の目標になります。


さて、そのためには・・ということで、いよいよデッキ強化のお話です。繰り返しますが、ゲーム全体を通した中で最も重要な出荷絡みの要素は「10,12辺りの都市でなるべく早く黒枠マスのディスクを解放する事」であり、決して「終盤のサンフランシスコ連打」じゃないんですね。その事だけ念押しして、デッキ強化絡みの選択肢を以下の3つに分けます。再度相関図を参照しつつ…。

① 牛を購入してデッキ強化する
② 手札を廃棄してデッキ強化する
③ デッキ強化しない


相関図【デッキ強化と出荷2】


デッキ強化の手段は、大きく分けると強い牛を購入する(①)か、弱い牛を廃棄する(②)かのどちらかです。そして、③ の「デッキ強化しない」とは・・どういうことかというと、デッキ強化以外にも遠くへ出荷する手段として証明書があります。仮に証明書が最大なら6、初期デッキの育種価最大は7、さらに駅長タイルの永続証明書を3つすべて持っていたとすると、デッキ強化しなくても価値16の都市までは出荷が可能で、ちゃんと現実的な戦略として機能します。


これらはすべて相関図の矢印関係の通りですが、さらに矢印をさかのぼってみましょう。

① 牛をたくさん購入するためには、カウボーイが必要です。すなわち、カウボーイを多く雇ったプレイヤーは牛を購入してデッキ強化するのが合っていると言えます。

② いわゆる「デッキ圧縮」と呼ばれるものです。圧縮の手段は、現状は補助アクションを利用するしかありません。また、列車を戻す必要があります。技師を多く雇っているプレイヤーは他のプレイヤーよりも列車を進めやすく、列車を戻すことによる相対コストが安い状態であると言えます。すなわち、技師中心のプレイヤーがデッキを強化しようと思ったら、圧縮が一番手軽です。もちろん、最低限の牛の購入は必要です。

③ デッキを強化しない以上、継続的に証明書が必要です。証明書は7a、10aなどの建物の効果で増やすこともできますが、それらがなければ頼るのは補助アクションです。補助アクションを利用する場合は、デッキ圧縮同様に列車を戻す必要があります。すなわち、列車さえ進んでいれば常に選択肢には入ります。一方で、カウボーイを雇った場合は牛を買うしかメリットがないので、自然とデッキが強化されていき選択肢から外れます。以上より、デッキを強化しないのは専ら技師中心のプレイヤーの戦略です。


基本戦略記事1【導入】でのまとめとも合わせて上記を要約すると、「カウボーイ中心の場合は牛を買ってデッキを強化する。技師中心の場合はデッキを強化する選択肢と強化しない選択肢があり、強化する場合は圧縮を手段に用いる。」ということになります。


ちなみに、カウボーイと技師を両方雇って運用するのは弱いと筆者は考えています。カウボーイと技師では、1回のアクションでどちらか一方しか活かせないほど効果が異なっているため、よほどゲームが長引かない限りはどっちつかずで終わってしまうと思います。(※2)流れで無理なく雇えたために、少しだけ併用するかたちになることくらいはあるかもしれませんが…。

グレートウエスタントレイルは、重ゲーが私を呼んでいる(笑)・・がごとく要素が多いので、ついいろいろ手を出したくなりがちですけど、そうしてしまうと弱いです。ちゃんと特化してこそ勝ちを狙えますので、浮気したくなったときには「また次のゲームで試そう」と思うようにするとよいかもしれません。^^


ポイントまとめ

・デッキ強化は出荷のために行なうもので、それはあくまでゲームの一部。

・出荷の一番の目的は黒枠マスのディスクの解放。

・カウボーイを雇ったら、ひたすら牛を購入してデッキ強化する。

・技師を雇ったら、まずデッキ強化自体行なうかどうかを考える。行なう場合は圧縮する。

・カウボーイと技師、両方は雇わない。

 

  ※1:ここでは簡単のため、収入を得るフェイズも出荷の一部として捉えています。正確には、カンザス市へ到達したときの処理をすべてひっくるめて出荷と呼んでいます。

  ※2:仮に、技師の人数分列車を進めつつ牛を購入できるような私有建物が拡張セットで出てくると、1手で両方活かせるので状況も変わるかもしれません。