都道府県連合パズル・ゲーム研究室

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グレートウエスタントレイル:基本戦略考察8【共有建物の評価】

共有建物は、ゲーム開始時から終了までずっと同じ位置に固定されており、プレイヤー全員が平等に使えるアクションを提供してくれます。A,Bのように必須のものから、たまにしか使わないもの、戦略によって使用頻度が分かれるものなどさまざまです。中身は常に変わりませんが、位置は(ランダムなら)毎回変わり、それによって微妙に状況も変わってきます。

効果は全体的に万能で、一部の私有建物のように偏ったものはなく、ゲームを通してどのように計画に組み入れるかが重要になります。特にまだ私有建物の少ない序盤は、主に共有建物のアクションで拡大再生産を目指すことになるのでなおさらです。

本記事では、A~Gの各共有建物固有の特徴や、位置の違いによって生じる注意点などを考察していきます。共有建物の位置の違いによる影響は、私有建物のラインナップなどと比べるとかなり繊細なもので、タイトルでは基本戦略を謳っていますが一部応用的な内容も含むかもしれません。ご容赦ください。


まず最初に有効な視点として、共有建物(+出荷)を以下の3種類に分けて捉えるのがよいのではないかと思います。

① お金を得る目的で止まる建物:D,F,出荷(※1
② お金を使って発展する目的で止まる建物:A,B,E
③ 主に列車を進める目的で止まる建物:C,G


常に流れは ① でお金を得て ② で使うのが原則です。例えば序盤であれば、Dでの金策は(住居タイルがまだ少なく)望めないため、主に出荷とFで得たお金を使ってAで労働者を雇っていくことになります。出荷も広い意味では誰でも踏める位置が固定されているスペースですから、共有建物の一部と考えたほうがわかりやすいと思います。

仮にA,B,Eが連続していてすべてに止まりたい場合は、前もって大量のお金を用意しておく必要がありますし、通行料を徴収できる私有建物は ① の直前よりも ② の直前に建てたほうが活きる・・など、上記の視点だけでも考えられることはたくさん出てきます。③ については、技師戦術のときに重要な建物で、また性質は異なります。


以下、A~Gまで個別に見ていきます。応用的な内容も多いのでまとめは一部の観点でしかしませんが、各々活用していただければ幸いです。


労働者を雇う建物。ゲームを通してお世話になるが、特に序盤は極めて重要。労働市場や予見スペースにめくれている労働者タイルや対戦相手の動きを見て戦略を考え、適切に雇う必要がある。最初は初期コインで1人だけ雇うのと、金策してから2人まとめて雇う選択肢があるが、目当ての労働者が雇えるなら後者のほうが効率は良い。仮に2回に分けて1人ずつ雇ったとすると、2回とも白牛を捨てられたとしても+1手で4コインの価値しか生まないため。これは1牛を2枚捨ててデッキを回転させられるFよりも弱い。ただし、Aがゴール近くにあって、2手目出荷前提で初手に踏むのに適当な建物が他にない場合はAでの1人雇いから入って問題ない。Aの手前に(出荷を挟まずに)Fがある場合は、Fで4コインを得た上でAで白牛を捨てられれば、初期のコイン量の差によって3~4番手のみ2人雇いができるメリットが生まれる。Aがルート前半にあってその前にFがないときは、カンザス出荷を経てから2人雇いを目指すのがセオリーだと思う。いずれにせよ、労働者の競合が激しくなりそうなときは臨機応変

労働者タイルが労働市場に補充されるのは出荷のタイミングだから、補充されないと目当ての労働者を雇えないときは、対戦相手のコマの位置から出荷タイミングを予測して、ちょうど補充されてカウンタが進んだ直後にAを踏むというテクニックが重要になってくる。ここでは詳細は割愛するが、Aの位置によって優位の取り方が変わってくる。最初のAで方向性を決めたあとの2~3回目で目当ての労働者を追加できずに拡大再生産が遅れる事態は本当に痛く、これはなんとしてでも避けたい。特に職人戦術のときに4人目が遅れるのは致命的。中盤になると雇う際の賃金も上がってくるが、その中でも7行目の6コインの労働者は特別安くて狙い目。うまく立ち回って雇えると有利になる。



私有建物を建設する。Aと並び、戦略によらず重要な建物。職人を雇わない場合は序~中盤にかけて低コストの建物を建てるために、職人戦術の場合はゲームを通して利用される。うまいこと通行料建物で妨害できそうなときは、ここからスタートするのも有り。特に他のプレイヤーのコマの位置が決まってから手を打てる下位番手はやりやすい。どうしても優先して押さえたい建物スペース(災害タイル先など)がある場合も、Bは早めに踏みたい。最初に建てる建物は通常低コストだから、特に金策は必要ない。

早期に10a,10bを目指す職人戦術の場合は、一時的に大量のお金が要るので計画的に貯めながら動く必要がある。また、Aで4人目の職人を雇ったときの即時効果で建てた建物をBで改築することで完成させるのがセオリーなので、Bの直後に建てたほうがより早く使える上にゲーム終了までに多く踏める確率が高まる。AとBの位置関係や金策建物(D,F,出荷)の位置をあらかじめ視野に入れておくことも重要。AからBまでの間で金策ができない場合は、Aを踏む前に必要なお金をすべて用意しておかなければならない。



技師の人数分列車を進める効果に加え、証明書の増加や目的カードの獲得を兼ねている建物。前者は技師戦術の際に必須の効果で、なるべくなら技師を3人以上にしてから踏みたい。後者はどちらかというとサブだが、証明書は黒枠マスのディスクを解放するまでの過程で決して疎かにできない。ただ所詮1証明書なので、他にもっと効率的に証明書を増やせる手段があったり、証明書なしでも計画的に育種価を上げられる場合は価値が下がる。Cがゴール近くにあり、あと1証明書でちょうど10に届くといったときにはさすがに使えるが。目的カードは自然に達成可能な高得点のものが対戦相手と競合していれば取りにいってもよいが、以前の得点効率の記事でも述べた通り、終盤まで何かしら取れる余地を残しておいたほうが動きやすいことが多い。カウボーイ戦術のときに頻繁に踏みたい終盤の共有建物はEだけなので、目的カードを取れる場合のCは往々にして安定した次点の得点行動になりがち。技師戦術のときは中盤以降ほぼ毎回踏みながら、その時々で証明書と目的カードのうちの有効なほうを選んでいけばよい。



主にまとまったお金を得るために止まる建物。補助アクションはさまざまな用途に使える。2コインを払って列車を進める効果はやや弱く、それでちょうど駅長タイルが取れたり、住居タイルが溜まっていないときのみの選択肢。住居タイルでは4コイン以上は欲しいところ。ゴール近くにあると単に手札入れ替えのために利用される場面も出てくるため、住居タイルもより取られやすくなってここでの金策は難しくなる。また、ルート後半にあるほうが出荷してから次に踏むまでに遠く、予見で置いた住居タイルも他のプレイヤーの手に渡りやすいために溜まりづらい側面はあるかもしれない。その場合、住居タイルを置くのを渋ると相対的に場の災害タイルが多くなる。とはいえ絶対量からしてまったく溜まらないこともないので、対戦相手の出荷タイミングを見ながらうまく溜まったときに踏めるようにすると有利。その点はAと見方が似ている。逆にルートの初めにある場合は、予見で置いた住居タイルをすぐに取れることになるので、金策の戦略は比較的シンプルになる。ただし出荷直後のお金が潤沢な状態で踏むことになるため、考えなしに通り過ぎてしまってあとでお金が足りなくなる事態には注意。アルファベット順の配置のときは、ルートから逸れているというまた別の理由でやや溜まりやすそう。どんな戦略を取るにせよ一定量お世話になるが、圧縮戦術で6aを運用した場合はそれ以降ほぼ不要になる。

加えて建物ではなく、位置の話を少し。アルファベット順のDの位置については、ここだけ少しルートから逸れていると同時に、直前の建物スペースが1つしかないという特徴を持つ。他はすべて災害タイル先も合わせれば複数あるか、もしくはスタート直後かである。すなわち、このDの位置にA,B,Eのような頻繁にお金を使う建物があると、その直前に通行料建物を建てたときの妨害効果は凶悪になる。やったことはないが、早期に7aや7bを建てたプレイヤーがいると酷いことになるかもしれない。特にAは全員が利用する上に一度にかかる金額も大きいので、先手で1aや1bを建てる妨害は有効。それで対戦相手の労働者の雇用計画を狂わせられれば、かなりの得点を削ることができる。Bの場合、妨害されると痛いのは主に職人戦術側なので、モチベが生まれるのは職人を雇わないカウボーイ戦術のときか。職人を雇ってないプレイヤーは中盤以降踏まなくなるために、他と比べると出力は落ちる。職人戦術のときも妨害を防ぐために真っ先に押さえてしまうのは有り。ライバルがいれば牽制にもなる。Eは、カウボーイ戦術側が頻繁に利用する建物なので、技師戦術のプレイヤーに妨害されてしまうとカウボーイ戦術側は苦しくなる。だからといって、カウボーイ戦術では余計な建物を建てている余裕はあまりないので、この環境(Dの位置にEの建物があるとき)はカウボーイ戦術にとってやや不利だと思う。



牛を買う建物。カウボーイプレイのときには戦略のメインであり、そうでなくてもデッキを強化する以上は少しは利用する。まったくデッキ強化しない戦略のときに限り、一度も踏まないこともある。買う牛の種類や量を調整することでお金を使いきりやすいため、Eの先に災害タイルがあるとその先のスペースを利用しやすくなる。(通行料を度々踏み倒せる。)アルファベット順の配置では、落石が正にその状態。位置の違いによる影響は比較的小さいが、列車を進めないまま出荷を繰り返す戦術の場合は、ルート前半にあったほうが通行料建物の餌食になるリスクが低くて安全。



金策+デッキ回転、および災害タイルを獲得できる建物。災害タイルは得点効率が悪い上に拡大再生産に寄与しないので、序~中盤は専ら金策のための建物と考えてよい。弱い牛を捨ててデッキを回転させつつ4コインを得られる効果は悪くなく、さらに捨てるのが1牛であれば高確率で手札の育種価も増えるため、出荷の際に増える収入の分まで得をしている。特に序盤は住居タイルも溜まっておらずDでの金策が難しいため、専ら出荷とFでお金を工面していくことになる。初期手札に同じ牛が2枚あれば、ここからスタートするのは多くの場面でセオリー。なるべくなら1牛を捨てたい。

ゲームが進むにつれて、段々と弱くなり利用されなくなっていく。中盤以降は災害タイルの獲得がメインになるが、止まるメリットがあるのは目的カードの条件になっているときか、他にやる事がないときくらい。あるいは災害タイル先の建物スペースを利用していて除去したいときだが、仮にその目的でも、お金が余っていない限りは何かしらの拡大再生産に影響が出るので、無理に止まるのはお勧めしない。終盤に私有建物が乱立してきてどうしてもここしか止まる所がない状況なら、4コインを得られるならそこまで悪くない。

なお、稀な状況だが出荷の手前で手札の入れ替えを行なうのが困難なラインナップのときは、手札調整の意味でもこの建物が命綱になることもある。



技師の人数分列車を進める効果+補助アクション2回。Cと同様に、技師戦術のプレイヤーに中心的に使われる建物。補助アクションには列車を戻して効果を得るもの(証明書と圧縮)もあるので、それとも噛み合っている。圧縮してデッキを強化しながら高速で出荷を繰り返す速攻戦術(職人特化の10a+4a)の場合、最後はほぼここしか踏みたい共有建物はなくなるためGの位置は特に重要。ルートの最初や最後、中間よりも、中途半端な位置(BやF辺り)にあったほうが2手出荷前提での10aと4aの場所の自由度が高くなってやりやすい。

カウボーイ戦術のときも、ゴール近くにあれば他に手札入れ替えの手段がないときには重宝する。ただしDとは違って技師を雇っていなければ弱いので、踏まないで済むならそのほうがよい。もしD,Gが共にルート後半になく、3bも4bも使えないときには、手札の育種価をドローで調整して出荷するのは困難になると考えたほうがよい。

 

以上の考察から、位置の違いが及ぼす影響度の大きさだけ最後にまとめて終わりにします。

影響度特大:A
影響度大:B,D
影響度中:E,G
影響度小:C,F


こんな感じでしょうか。出荷時の予見に絡むAとDは必然的に影響が大きいですが、特に大金が必要なAが頭一つ抜けているでしょう。Bの位置も、建てる建物の場所を考える際に重要です。Eは災害タイル先の使いやすさに関わってきたり、Gは特殊な戦略のときや手札入れ替えの使用用途に関わる・・など、ここら辺は限定的です。ただしかなり繊細な話なので、まだ他にも見落としている点はあるかもしれません。

なお、これらはあくまで「位置の違いによる影響」の話なので、プレイの中で注目する必要があるかどうかとはまた違います。Fはどこにあってもあまり場に変化をもたらしませんが、序盤の金策には重要なので「ここにあるんだな・・」と、意識する必要はあります。

 

  ※1:ここでも以前の記事と同様に、「出荷」という言葉はカンザス市到達の意味で使っています。逆にカンザスと言うと、ディスクを置く場所のほうを想起しそうで誤解を招きかねないと思ったからです。