都道府県連合パズル・ゲーム研究室

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グレートウエスタントレイル:基本戦略考察9【駅長タイルの評価】

基本戦略記事の最後は、駅長タイルに関する考察です。

駅長タイルは、技師戦術のプレイヤーにとっては重要な得点源です。効果にはゲーム中の効果とゲーム終了時の得点効果があり、それぞれの重要性はタイルによって異なります。ゲーム中の効果は、獲得時点でメリットを得られるのはお金くらいのもので、タイルの半数以上を占める永続証明書は未来に渡ってジワジワと効いてくる効果です。一方、駅長にすることで労働者の数が減ってしまうのはデメリットで、これもその労働者が必要になる未来のタイミングで影響を及ぼします。

つまりまず言及したいのは、駅長タイル獲得による効果はメリットもデメリットも「未来のものが主体」であるということです。これがもし片方が現在であればまだ損得も考えやすいと思うのですが、未来の状況を比較するというのはかなり高度で、特に初心者の方にとってはよくわからずに「とりあえず取るか…」となってしまいがちな部分だとは思います。

実際は、メリット・デメリット双方ともに大きなものであり、正しく比較検討して取るか取らないかを選ぶ必要があります。戦略によっても有効なタイルは変わるので、考えなしには取らずにちゃんと戦略に合った駅長タイルを狙っていく視点は大事です。

全般的には、序盤の労働者は拡大再生産にかなり重要なので、序盤に駅長タイルを取るのはデメリットが大きいと思われます。その観点だと手前にある駅長タイルほど取りづらいことになりますが、反面手前にある駅ほど誰もが到達しやすくライバルも多くなるので、ゲームとしてバランスが取れていると思います。目当ての駅長タイルをライバルに取られてしまうと大きく不利になるので、拡大再生産との狭間で悩ましいところです。

「誰か1人しか取れない」事も当たり前ですが駅長タイル固有の特徴で、技師戦術の人が複数いるときの駅長タイル争いは一つ勝負の重要なポイントになります。強い駅長タイルを取れると、相手よりも優位に立てるでしょう。そもそも争いが生じている時点で他の戦術に対して不利かもしれませんが、技師戦術の場合は2人で交互に追い越しながら列車を進めていくことで進みやすくなるメリットもあります。駅長タイル争いや後半の駅の取り合い(ふさがれて入れないなど)のデメリットと比べると、ほんのわずかでしょうが。

なお、技師戦術以外のプレイヤーにとっては、特殊な状況(10b+8bの建物コンボなど)を除いて駅長タイルは現実的な選択肢にはなりません。技師戦術側が全員見送って列車を先に進めてくれた時点で、初めて選択肢になります。


では、以下タイル別の考察です。

1.2コイン+労働者の人数×1点

得点ソースとして非常に万能で強力なタイル。初めからいる労働者の分も得点になるため、1種類の労働者を最大まで雇うだけで8点、2種類の労働者を活かす戦術なら10点以上が見込める。どんな戦術でも労働者は必ず要るため、常に一定の高得点が約束されているに等しい。誰もが取りたいタイルのはずで、先んじて列車を進めていかないと取れないと思ったほうがよい。

技師戦術のときにはこのタイルが勝利の分かれ目になることも多く、獲得狙いの優先度は特に高い。ただし手前のほうにあると、無理に取っていると列車の進行が遅れるので悩ましい。見送る場合は、他の誰かに高得点が入ることは覚悟しないといけない。

即時効果の2コインは一見弱く見えるが、駅長タイルの獲得過程ではお金のやりくりもギリギリなことが多いので馬鹿にはできない。


2.住居タイルまたは災害タイル+目的カード2枚につき3点

他と比べると少々魅力に欠けるタイル。目的カードは2枚で3点だけでは弱いし、4枚6点を目指すにしても条件達成をやや頑張る必要が出てきて元が取りづらい。即時効果も災害タイルはその場の得点だけで拡大再生産に寄与せず、住居タイルは溜まっていないとおいしくない。先の駅にもっと有効な駅長タイルがあれば、スルーしてしまってよい。


3.永続証明書+災害タイル2枚につき3点

出荷をやや楽にしつつ災害タイルの価値を上げてくれるタイル。永続証明書は序盤に取れると活きるが、得点効果のほうは災害タイル自身の得点効率が悪すぎるために、共有建物Fで取っている限りはさほどおいしくない。単純に2個獲得するのに14コインかかるから、仮に片方で4コインが得られたとすると差し引き10コイン。これは2点相当なのでボーナスの3点と相殺すると+1点。災害タイルの得点(2~4点)に加えると、1手辺り3~5点の価値ということになる。これは目的カードと同じ水準であり、お金を使ってこの状態ではとても積極的に取るべき手だとは言えない。

よって、このタイルを活かすのには少なくとも私有建物4aは必須。中盤以降毎回4aを踏み、無理なく災害タイルを増やしていけるかたちを作れれば普通に強い。ただしお金がかかるために、奥の駅狙いとの両立はやや難しくなる。技師戦術の中でもデッキを強化せずに奥の駅を目指していく非圧縮戦術よりも、奥の駅を諦めて出荷重視で動く圧縮戦術のほうが相性の良い印象がある。特に、10a+4a+Gで専ら災害タイルを獲得してデッキ圧縮しながら出荷を繰り返す速攻戦術の場合は、最強タイルに様変わりする。取ったなら災害タイル4枚は獲得して終えたい。

4aがない場では、よほど永続証明書が必要でない限りはスルーでよいと思う。良くも悪くも、環境や戦略によって使える使えないが分かれるタイル。


4.永続証明書+緑と青の住居タイル1セットにつき3点

金策で得た住居タイルを得点にも換えてくれる優秀なタイル。流れにもよるが、住居タイルを意識した立ち回りをすれば、高確率で青緑2セットの6点には乗る。住居タイルによる金策は多くの戦略で一定量必要になるから拡大再生産の邪魔をせず、加えて永続証明書も有効・・と、大変丸い効果。一つ欠点として、住居タイルの色が偏ると終盤にあえて安いほうを選択しなければならなくなる場合があるが、それくらいは仕方ない。対戦相手も、予見スペースに緑と青の住居タイルが両方めくれているときにどっちを置くかの判断は大事で、なるべくこの駅長タイルを持っているプレイヤーを困らせるように置くのがよい。(目的カードが絡んでいるプレイヤーも然り。)色を重視して得られるお金が減ったことで、その後の得点行動が損なわれてしまう場合は、3点よりもお金のほうが有意義なこともあるので注意が必要。終盤に単なる3点行動として住居タイルを取るのは弱いから、あくまで金策メインでついでに可能なら色をそろえるくらいのスタンスでよい。

もう少し詳しく言及すると、金策というのは必要なお金を工面するために行なうものであるから、例えば住居タイルが最大の10コインの位置まで溜まっているけれども当面は6コインあれば十分・・という状況なら、あえて色をそろえるために6コインのタイルを取るのは有り。一方、6コインの位置までしか溜まっていないけれども色をそろえるために4コインのほうを取るとやりたい事ができなくなってしまう・・という場面では、決して安いほうを取ってはいけない。

牛の購入に度々お金を要するカウボーイ戦術のときに特に相性の良い効果のため、一番手前にあって技師戦術側にスルーされたようなときには狙うのも悪くないかもしれない。ただし本来の牛による拡大再生産の効率を落とさないようには注意。列車を進められる目的カードの力を借りられれば、より現実的になる。6aのような大量のコインを得られる建物とは相性が良くない。


5.永続証明書+証明書2枚につき3点

永続証明書を得つつ、最後に使われずに残った証明書が得点になるタイル。既に永続証明書付きの駅長タイルを1枚持っていれば、自然に3点が入る。この場合、最大で12点の獲得が可能。強いが、出荷に証明書を使用した時点でゲームが終わってしまうとあまり得をしないため、終盤の寄せ方に少々工夫が必要になる。最後の出荷の価値が下がるのはデメリットだが、6や8辺りの出荷でも目的カードで得点が入るようにしておくと、効率の低下は最小限で済む。私有建物10aとはシンプルに噛み合うが、10aがなくても終盤の補助アクション×2が2コインで3点になるのは優秀。

前述の通り永続証明書を2枚取れると得なので、技師特化や10b+8bの建物建設で駅長タイルの複数獲得を目指すかたちのときに特に活きるが、その中でもデッキを強化しない戦術とは極めて相性が良い。デッキを強化しないとそもそも最後は出荷で得点が入りづらくなる(現実的に到達可能な価値10~14の得点都市が埋まってしまう)ため、このタイルによって改めて出荷価値減少のデメリットは発生しないからである。

 

以上です。大まかに戦略別の序列を表すと、以下のような感じになるでしょうか。

① 技師戦術(4aあり):1>>5>3≒4>>>2
② 技師戦術(4aなし):1>>5>4>>>3>2
③ カウボーイ戦術:4>1>>2≒3≒5
④ 職人特化の10a+4a(特殊):3>>>5>1>>2≒4


メインの戦略に関わるのは技師戦術のときだけなので、① と ② のイメージを覚えておけば十分だと思います。技師戦術なら1,5と3か4のどちらかの計3枚が取れれば安泰です。③ の場合は4、④ の場合は3が一番手前にあってなおかつ技師戦術側がスルーしてくれた場合に限り、狙う選択肢が生まれます。