都道府県連合パズル・ゲーム研究室

パズルやゲームに関する研究結果をアップしていく予定です。

スルージエイジズの戦略各論2【指導者と驚異】

それでは、前回の記事をふまえた上で、スルージエイジズ(新版)の指導者と驚異の各論に移ります。まだまだプレイ回数が少なく、理解不足の点や理論の見落としもあるかもしれませんがご容赦ください。

基本、有効だと思った指導者と驚異にのみ触れます。触れられていないものは、そう思わなかったか使ったことなくてよくわからないかのどちらかです。後々になって有効なことがわかったら、コンテンツを増やすこともあるかもしれません。

 

<時代Aの驚異>

・ピラミッド

内政行動数が1増えるのはシンプルに強い。そのために資源を要するのは一見デメリットのようにも思われるが、実際は青銅と哲学に1人ずつ労働者を置いたあとは差し迫ってやらなければならない事もないため、ほとんどデメリットにならない。むしろ、完成後にずっと内政行動数1が増えるメリットのほうがはるかに大きい。

これはスルージエイジズのメカニクスによるもので、有効な技術カードを取って出せるまでは拡大再生産を進められないような作りになっているため、最序盤の手を有効に使ってこれを進めることはできない。だからこそ、技術カードを出してからの手数のほうが重要で、ピラミッドはその最序盤の弱い手をのちの強い手に転換する効果を持っていると言える。

ピラミッドは登場が早いので、これを先に押さえておけば内政行動数を増やすための法や君主制の争いに無理に参加しなくてよいのも地味なメリット。法や君主制の登場が遅く、先にピラミッドを完成させられたようなときには、さらに内政行動数の優位を生かして奥にある法や君主制をカットしていくような戦い方もできる。(特に2人戦)

余談だが、このように順調に拡大再生産を進めることができて内政行動数を増やしていったときには、中盤以降はもうピラミッドの役割は相対的に重要じゃなくなるため、時代Ⅱの「歳月による荒廃」イベントにより文化点2を産出するようになるのはわりとおいしい。このイベントは他の驚異を建てている人にとっては痛いことのほうが多いので、ピラミッドを建てたときに引いたら積極的に使っていくとよいと思う。


空中庭園

これ1つで幸福2を得られるのは強い。幸福は通常、1つ目は時代Ⅰの最中に必要になり、2つ目は時代Ⅱに入って黄色駒を2個失ったときに必要になる。ここまで一切の労働者を幸福のために費やさずに手を進められるわけで、特に軍事力に全部投入すれば誰よりも早く軍拡を進められる。時代Ⅱの頭に軍拡の遅れたプレイヤーの侵略に成功すればその後も有利に展開できるので、幸福2で足りる人口のうちは軍事力中心で進めていくのがよいと思う。仮に侵略できなくても、幸福に労働者を取られている他のプレイヤーにより非効率な軍拡を強いることができる。


アレクサンドリア図書館

ピラミッドや空中庭園と比べると劣る印象だが、これも強いと思う。科学点は序盤は手軽に得られる手段がないので、たとえ1ずつでも積み上げていくことでそれがなければ出せなかったはずの技術カードを出せるようになり、拡大再生産を進められる効果が期待できる。単純計算でも、時代Ⅱの平均的な重さの技術カードを2枚出せるくらいは溜まるから馬鹿にはできない。内政カードと軍事カードを1枚多く持てるようになる効果も地味においしい。

 

<時代Aの指導者>

・モーゼ

1手で食料4~5は、Aの指導者の中では強い。最速なら時代Ⅰの3ターン目までに人口の増加を4回行なえる(1~2ターン目に1回,3ターン目に3回)ので、取りたい時代Ⅰの指導者が早めに現れたときにも早々に効果を使いきって乗り換えられるメリットがある。時代Ⅰ中の人口の増加は多くても5回まで(最後までモーゼを残してたらこの限りではない)で、食料消費は1に留めておくのがよいと思う。5回行なってから人口増加のイベントがめくれてしまった場合は、運が悪いが農地の強化が必要。

増やした労働者はさまざまな用途に使えるため、内政カードのめくれ方に合わせて手を変えられるのも強み。印刷機のような人手のかかるルートも許されるし、青銅に4人目の労働者を置いて驚異中心で拡大再生産を進め、残りをすべて軍事力に投入するようなこともできる。食料を強化しない限りモーゼ引退後の人口増加には苦労するので、軍事力のための労働者を残しておくことだけは注意。

時代Ⅰ中は最初の労働者2人だけで食料は十分に足りるため、農地技術は灌漑は取らずに時代Ⅱに一気に品種改良に改良するか、あるいは遠洋定期船を狙ったほうが効率は良い。(早めにめくれるかどうかのリスクはある。)遠洋定期船が取れれば、最後まで農業だけでも行ける。


アリストテレス

序盤の拡大再生産に重要な科学点を相当量得られるのは強い。時代Ⅰを通して活かしきれば、科学点5~6くらいにはなる。ただし早めに時代Ⅰの指導者に乗り換えたい場合は科学点2~3くらいで終わってしまうこともあり、その点はモーゼのような柔軟性はない。

技術カードを取ること自体にメリットが生まれるわけで、鉄のような将来使うかわからないカードを保険でピックしやすいのも強み。しかしこの状況は科学点の増加による技術カードを取ってから出すまでのサイクルの速まりも合わせ、他のプレイヤーよりも有効手が増えていることを意味するため、内政行動数を早期に増やせないと苦しくなる。ピラミッドを押さえた上でアリストテレスを取る流れなら安心だが、本来相性が良いのは増やした科学点で出せる法と君主制のほうなので悩ましいところ。

法や君主制が早めにめくれなかったり、カットされたりしてしばらく内政行動数4のままを強いられると一気に出力が落ちるが、逆にすぐに取れて順調に内政行動数を増やしていけたときの強さは随一だと思う。おそらく法と君主制が2枚ずつあり、競合が少ない3人戦で最も輝くと思われる。


・ハムラビ

最初から実質内政行動数5を持っているのは魅力的だが、軍事カードを1枚しか引けないデメリットもある。基本的に目先の利益を考えると内政行動数のほうが得だが、軍事行動数が減ることによる防御力の低さは、時代Ⅰも後半になるにつれて危険になってくる。

戦い方としては、たくさん内政行動ができる事に甘えて盤面の拡大再生産を進めるよりも、利を生かして法や君主制を早めに取り、真の内政行動数を増やしにかかったほうがよいと思う。また、能力は毎ターン無理して使う必要はない。

こちらが法と君主制を取れれば相手に渡ることのない2人戦では強いと思うが、競合の少ない3人戦ではやや微妙か。カエサルやアレクサンダーなど速攻で軍事力を上げられる指導者に対する抵抗力はおそらく弱い。多人数戦だとそうした指導者を誰かしらが取る確率が上がることを考えると、ゲーム人数が多くなるほどハムラビを選ぶ優位性は低くなるように思える。

ちゃんと早期に内政行動数を増やしてずるずるハムラビを引っ張らなければ軍事力強化で苦労することもなくなるが、時代Ⅰに引ける軍事カードの総数で他のプレイヤーより劣っていることには変わりなく、なかなか有効な戦術カードを引けずに方針が立たないような展開になりやすい。なのでハムラビを使うときには特に、対戦相手が持っている戦術カードを予想しながら軍拡の方向性を合わせていく立ち回りを意識することが大事になる。

期待値的には時代Aのイベントはどんどん発生させたほうが食料と資源の生産が加速し、内政行動数の多い自分だけそれをうまく使いながら周囲には腐敗を強いる(あるいは腐敗させないために手が狭まる)ことができるため有利。ただしそもそもイベントカードを引きづらいのと、軍事力系のイベントなど将来を考えると入れづらいものも多いジレンマがある。


アレクサンダー大王

黄色駒が増える効果はすぐには実感しづらいが、将来に渡ってかかる食料が減り、人口が1増えた状態で安定させられるため1つだけでも決して弱くない。時代Aの指導者としては及第点の強さ。アレクサンダーにかかわらず、黄色駒の影響を甘く見てはいけないと思う。

軍事力のほうは、時代Ⅰではそもそも侵略カードを引きづらいのと、仮に引けても成功するかは相手次第なので利を得られるかどうかには運も絡む。私は1~2ターン目に侵略カードが引けたり、カエサルがいて守りを固める必要があるとき以外はさっさと引退させて黄色駒にしてしまうことが多いが、そこはプレイスタイルが分かれるところかもしれない。

 

<時代Ⅰの驚異>

・カレル大学

科学力2アップは強い。これ1つで哲学にいる労働者2人を錬金術に改良したのと同じ効果がある。すなわち錬金術を取れなくてもなんとかなる。ただし錬金術へ行かない場合は時代Ⅲに一気にコンピュータへ改良するのはハードルが高いので、時代Ⅱの科学的方法への改良がより重要になる点に注意。


サン・ピエトロ大聖堂

わりとおいしい文化力2に加えて、将来的な幸福の嵐が約束される。空中庭園とは違い他のカードや労働者とコンボさせなければ幸福は1しか増えないので、軍拡を加速させる副次的な効果は持ち合わせていない。むしろミケランジェロジャンヌ・ダルクのように、しっかり人を幸福にかけるときのコンボ用の驚異という印象。幸福に関しては終盤は完全にオーバーキルになり、一切心配する必要がなくなる。


・タージ・マハル

この段階での文化力3は魅力的で、早期に完成させられれば時代Ⅲの驚異を超える文化点をたたき出してくれる。ただし、建てている暇があるかどうかは状況次第。ここに手をかけたことで軍拡で負けて侵略や戦争を許してしまっては意味がないので、建てるとすれば文化力系はとりあえずこれだけにとどめるのがよいと思う。少なくともオペラのような他の手段と比べると、より少ないコストで手軽に文化力が得られる。

 

<時代Ⅰの指導者>

レオナルド・ダ・ヴィンチ

錬金術か印刷機を建設できていれば、科学点と資源を両方増やすことができて盤面の拡大再生産が加速する。シンプルに強い。時代Ⅰの指導者の中で安定して拡大再生産に寄与し続けてくれるのはダ・ヴィンチだけなので、なおさら際立っている。時代Ⅰの指導者は中盤の割に文化点獲得系が多い印象だが、ここでちょっとやそっとの文化点を獲得しても、最後の時代Ⅲのイベントや軍拡を進めた先の侵略や戦争で吹き飛んでしまう場合が多いように思う。

つまり、増やした科学点と資源は都市建築物、軍事ユニットなどあらゆる技術の発展に使え、ダ・ヴィンチを引退させたあとにも失速しない。これに尽きると思う。場の状況に応じて、最も有利な方向に拡大再生産を進めていけばよい。食料だけは、ちゃんと意識して強化する必要がある。


ミケランジェロ

軍事力さえ侵略されない程度にケアできれば、驚異中心で拡大再生産を進めつつ寺院や劇場と合わせて文化点も稼いでいけるから強い。特にサン・ピエトロ大聖堂とコンボさせると、大量の文化点が得られる。

ダ・ヴィンチとは違い生産力自体は増えないため、あまり余計なことはできない。きっちり特化して進める感じになると思う。そもそも内政行動数をなかなか増やせなくて出遅れたようなときに手を出すのは、後々で軍拡競争の餌食になるリスクが高いので控えたほうが無難。モーゼやアレクサンダーといった、人口を増やしやすい戦略と相性が良い。

驚異はたくさん取るつもりなら、よほどアクションカード運に恵まれない限りは早期の資源強化が必須だと思う。選択肢としては、早めに4人目の労働者を青銅に置くか、鉄に改良するかのどちらか。最優先で取りたいのはサン・ピエトロ大聖堂。それ以外は「ピラミッド,空中庭園アレクサンドリア図書館,カレル大学,タージ・マハル,遠洋定期船,エッフェル塔」といった中の2~3個を流れに合わせて狙うかたちになる。ただし驚異の数は限られているため、ゲーム人数が多いとこの戦術は成立しづらいかもしれない。

都市建築物技術は神学か芝居が欲しいが、労働者をどれだけかけられるかは軍拡の厳しさにもよるところで、ここは無理をする必要はない。また、驚異建設の手数軽減も合わせて、石工技術は有効。


ジャンヌ・ダルク

主に軍拡で遅れそうになったときの選択肢。手軽に軍事行動数を得られるのは便利。文化力1も付いているし、軍事力にかかるコストを減らして総合的に伸びることを目指すカードという印象だが、時代Ⅱにナポレオンが登場する前の軍事リーダーを目指すような戦い方もできるとは思う。

ジャンヌ・ダルクへ行くなら、時代Ⅰの寺院の神学は押さえたい。サン・ピエトロ大聖堂と組み合わせると、さらに軍事力が上がる。引退後の軍事力のケアは必須だが、幸福自体はその後もずっと生き続けるために腐らない。

イベントを覗き見できる効果は、時に致命的な結果を回避することにもつながるが、その状況を見た対戦相手も中身を予想することができる点は要注意。軍事力系のわかりやすいイベントの場合、延々と軍事力レースが展開されて手番プレイヤーが軍事力1位になるまでずっとイベントが出されないといったことも起きたりするので興味深い。


チンギス・ハーン

時代Ⅰに騎士を取り逃し、歩兵中心で進めることになったときにのちの軍拡で後れをとらないための命綱。あるいはホメロスのような小まめに軍事ユニットを建設・改良する戦略の場合は自ずと歩兵が多くなりやすいので、そういったときに利用する。

ただし歩兵を騎兵とみなすことによる戦術要因の軍事力のアップ分は、よほどうまく噛み合わない限りはジャンヌ・ダルクの幸福によるそれと大差ないので、チンギス・ハーンを使うなら文化点3は継続的に得ていきたい。これができないと、ほぼジャンヌ・ダルクの下位互換になってしまう。人数的には3人戦が一番条件を満たしやすく、使いやすいと思う。


クリストファー・コロンブス

先住者のいる領土や広大な領土といった、黄色駒が得られる植民地を引けるとすぐに出せるので強そう。通常はジワジワと得られるはずの指導者によるメリットを一気に得られるという個性的な特徴を持つ。すなわち効果を最大化しようと思ったら、まず時代Aの指導者を使えるだけ使い、時代Ⅰの終わりにコロンブスに乗り換えて植民地を出してからまたすぐ時代Ⅱの頭に他の指導者を取るといったような使い方になる。

時代Ⅱに植民地が引けるのに懸けるのは現実的でないので、先に時代Ⅰの植民地を引いてから取るのが主流だと思う。しかし仮に取りたい指導者がすべて他のプレイヤーに取られ、最後にコロンブスしか残ってないという状況であれば、植民地が手札になくてもとりあえず押さえておいて時代Ⅱの植民地を狙うのは有り。この場合は引き延ばしてもあまりメリットはないので、黄色駒が得られるものにこだわらず次に引けた植民地をすぐに出すのがよいと思う。

 

<時代Ⅱの驚異>

・遠洋定期船

完成後は毎ターン無料で人口1が得られる。これは腐敗の恐れのない食料4~7と人口増加専用の内政行動数1が追加されたのと同じで、控えめに言っても強い。これ1つで食料関係の苦労がすべて解決する。ただ一番強いのは農地技術の開発を疎かにしたままピンポイントで取れたようなときなので、既に農地技術を強化してしまったあとで取るべきかどうかは悩ましい。それでも極端に強くしていなければ取る価値はあると思う。

遠洋定期船を完成させるときに加えて、その後増えていく人口を有効に利用するためには大量の資源が必要になるので、鉱山技術強化の優先度はかなり高い。時代Ⅱの頭に石炭を取れれば一番強いが、めくれるとも取れるとも限らないので、後々人口が増えることを考えても早期に鉄を開発して鉄4人体制を目指すのが丸そう。

いくら強いとはいえ時代Ⅱの終盤まで沈んでしまうとそれまでの間の拡大再生産が厳しいので、諦める決断も必要。その場合の食料事情は、灌漑を取ってなければ品種改良がさすがに不可欠なので取り逃さないようにしたい。遠洋定期船と品種改良で先にめくれたほうを取るくらいのスタンスで臨むのが無難かもしれない。


エッフェル塔

文化力4は強いと思うが、文化力3のタージ・マハルと比べると登場タイミングが遅いためにトータルで得られる文化点は少なく、コストも重い。それでも時代Ⅲの頭くらいに完成させられれば、時代Ⅲの驚異と同等の文化点はたたき出してくれる。石炭への改良を終えてからならコスト的なデメリットは少なくなるので、そういうときが狙い目。幸福1を生かせるようだとなお良い。


時代Ⅱの驚異の効果は強力だが、時代Ⅲに入っても完成させられないようだと、より重要な時代Ⅲの驚異争いに参加できなくなるため注意が必要。軍拡競争の展開によって資源をかけられるかどうか不透明なときには、たとえ魅力的に見えても取るのを控えたほうが無難。

 

<時代Ⅱの指導者>

ナポレオン・ボナパルト

言わずと知れたナポレオン。非常に強い。めくれた瞬間に内政行動数3をかけて取りにいってよいレベル。時代Ⅱには他にあまり戦術上重要な指導者がいない(クックの植民地特化くらい?)ため、出てくるまでにちゃんと内政行動数を増やせてさえいれば、問題なく取れると思う。自分の手番にめくれるかどうかは本当に運だが。

時代Ⅱは軍事カードに占める侵略カードの割合が一気に増え、効果も強力になるため軍事力が特に重要になる。ここで侵略を許してしまうと大きく勝利から遠ざかることになるし、逆もまた然り。そんなタイミングで手軽に軍事力を強化できるメリットは計り知れない。他に軍事力系の指導者がいない事も、ナポレオンの強さを際立たせていると思う。

単純計算でも歩兵と騎兵がいれば軍事力+4だし、軍事行動数が2増えるから防御力という点ではさらに+2。ナポレオンを出すだけで、これらがコストなしの即時で手に入る。もし他の手段で同等の軍事力を得ようと思ったら、軍事力3のユニット2つなら資源6と人口2、戦略と航海術(共に特殊技術)なら科学点14、大陸横断鉄道なら資源12・・と、そう簡単には得られないほどのコストが必要になる。このように考えれば、ナポレオンの強さがわかりやすいのではないかと思う。また、軍事行動を取りながらでも軍事カードを引き続けられる点も大きい。

直接的な効果はすべて軍事関係のものだが、軍事力をナポレオンに任せることで他の事を優先しやすくもなるわけで、ちゃんと内政にも貢献している。特に科学力や資源力の強化など、終盤を迎えるにあたっての重要な拡大再生産の局面で他者からの侵略を心配することなくこれを優先できることは大きいと思う。

防御力を固めて内政中心で文化点を伸ばしていくような戦い方もできるし、更なる軍拡を進めて相手に圧力をかけ続けることもできる。何がベストかは、場の状況やプレイスタイルにもよるところだと思う。先行逃げ切り型の戦術で軍事力を上げるのが難しいときに取ってケアしたような場合は、概ね前者になるか。一応内政重視で行く場合は、時代Ⅲの指導者に乗り換えづらくなるデメリットはある。ただ時代Ⅲの前半に有効な指導者がめくれるかどうかは運次第なので、過度に気にする必要はないと思う。


アイザック・ニュートン

時代Ⅰのダ・ヴィンチの発展形の効果。純粋な拡大再生産促進系で、ナポレオンが取れなかったときの候補としては筆頭クラス。ただ内政行動数は順調に増やしていけばこの頃にはもう十分になっていることも多いので、ダ・ヴィンチよりもメリットを実感しづらい印象がある。内政行動数1は時代Ⅱのアクションカード換算だと資源3に相当し、より控えめに見たとしても強化されているとは思うのだが。内政行動数上げにやや失敗しているときのほうが、取る価値は高いと思う。

一つ個性的なメリットとして、革命を行なったときにも内政行動数は戻ってくるので、どうしても取りたい技術カードが場に出てるようなときでも革命を行なえる。


・クック船長

序盤から植民地をたくさん引けたときに、地図学なども利用して集めていく特化戦術が機能すると、植民地の利を得られる上に大量の文化点を稼げて強い。ただクックによって増える植民修正はせいぜい2なので、頻繁に植民地を獲得することによる軍事力の低下には注意が必要。基本的に侵略や戦争を許さないようにしないと、そういった利も削られてしまって勝つのは難しくなると思う。

仮に周囲の競りが甘く1つの軍事ユニットで効率的に植民地を獲得していけるような場合でも、その機会が多い以上はきちんと軍事力強化の態勢を取っていないと遅れないようにするのは困難な印象。こちらがクックを取ると他の誰かにナポレオンが渡ってしまうことも大きい。植民地で内政を強化しているからといって、いろいろ手を広げすぎてしまうのは禁物。

失った軍事ユニットを回復するには継続的に食料と資源が必要だが、植民地を分類すると人口に関わる黄色駒が増えるものは時代Ⅰ・Ⅱそれぞれ6枚中3枚あるのに対して、資源が増えるものは1枚しかないので、何を引けるかにもよるが相対的に資源力の強化のほうが重要だと思う。軍事ユニット建設の資源が節約できるアクションカードは積極的に取りたい。また、防御力強化のためにも戦略(特殊技術)や立憲君主制(政体)を利用するなどして軍事行動数は多めに欲しい。


・マクシミリアン・ロベスピエール

革命を軍事行動数で行なえるのは、少なくとも内政を停滞させずに強い政体に変更できるわけで、拡大再生産上のメリットは大きい。限られたタイミングで強力な効果を発揮する点は時代Ⅰのコロンブスと同様で、時代Ⅱの終盤に出し時代Ⅲの頭にかけて革命を行なった上で、他の指導者に乗り換える使い方になる。

ナポレオン争いに敗れた中で時代Ⅱがもう終盤に差しかかっていたら、迷わず取ってよい。むしろロベスピエールに逃れられるかどうかは被害を最小限に留めるという意味では重要だと思うので、なかなか登場しないナポレオンを複数の人が狙っているようなときには、ロベスピエールの登場位置も意識しておいて損はないと思う。

変更する政体は、既に内政行動数が十分なら文化点3が付いている民主主義が理想。時代Ⅲの頭にめくれるようであれば、手札に控えてある時代Ⅱの政体を捨ててでも狙いたい。内政行動数が不足して苦しいようなら、あまりグレードにはこだわらずにさっさと革命したほうがよい。

軍事行動数での革命は強制なので、いざ政体を変更しようと思ったときに軍事ユニット建設の必要が生じないようには注意が必要。足元を見られ、革命した直後に侵略を許したのでは意味がない。早め早めに軍事力を強化するか、あるいは内政行動でもって軍事ユニットを建設できるアクションカードを手札に持っておくとより安全。

 

<時代Ⅲの驚異>

・ファーストフードチェーン

戦略によらず20点以上が狙える、時代Ⅲ最強にして丸い驚異。ライバルも多くなることが予想される。これしか高得点を得られるものがないときには、内政行動数をかけてでも取りたい。


・初の宇宙飛行

科学力重視の戦略のときに有効な驚異。時代Ⅲの序盤にコンピュータを建設できたときの出力は、ファーストフードチェーンを上回る。そういったときはぜひ積極的に狙いたい。少なくとも時代Ⅱの科学的方法を建設できていれば、狙う価値はあると思う。


・ハリウッド

劇場と書庫が得点になるが、書庫は活かせる場面が少ないように思うので主に劇場中心のイメージ。映画に労働者3人で24点とかが理想。オペラでもまあ強い。劇場や書庫へ行ってない人はまったく得点にならないので、戦術がかぶってなければ確保はしやすい。


・インターネット

他の3つと比べるとやや見劣りする印象だが、拡大再生産が順調なら同等の出力が出せる。基本的に高レベルの都市建築物にたくさん労働者を置いていかないと得点は上がらないので、「科学力,資源力,食料生産力」の3拍子揃っていないと活かすのは難しい。ただし、シド・マイヤーとコンボさせればコンピュータに3人労働者を置くだけで21点になるから普通に強い。他の驚異よりも資源が少なくてすむ反面内政行動数はかかるので、建築系の特殊技術は欲しいところ。

理想的な展開は、コンピュータからマルチメディアや映画につなげ、終盤一気に加速して完成させるかたちだと思うが、劇場よりも書庫との相性が良いので、余裕があれば時代Ⅱからジャーナリズムで科学力を強化しておくのも悪くない。科学力は潤沢でも資源力や食料生産力が乏しく、継続的に労働者を確保するのが難しい状況になってしまったときには、さすがにインターネットは選択肢からはずれ、狙うべき驚異はファーストフードチェーンと宇宙飛行に絞られる。その場合の技術開発は主に労働者の要らない政体や特殊技術中心で、イベントに焦点を当てた動きをするのが最善だと思う。

 

<時代Ⅲの指導者>

ビル・ゲイツ

高レベルの研究所があれば、相当量の資源が手に入る。科学力系戦術の切り札。科学力はそもそも重要だが、重視しすぎると通常は文化点の獲得が遅れ、追い上げるかたちになる。終盤の資源は高得点の驚異や劇場の建設に使え、その役割を十分に果たしてくれる。特にコンピュータとともに早めにめくれたときは、積極的に押さえたい。

資源は基本的に万能なので、激しい軍拡競争が繰り広げられている場合にも食料と軍事ユニットを強化して対応できる。文化力系戦術のプレイヤーとの差があまりに大きいときには、軍拡を進めて侵略や戦争での一発逆転を狙っていくような戦い方になるかもしれない。ただ時代Ⅲのイベントには科学力に関連したものも多く、見た目結構な差があっても逆転は可能なので焦る必要はないと思う。というかビル・ゲイツを活用できてる時点で科学力系戦術のほうに分がある印象。


・シド・マイヤー

こちらもビル・ゲイツ同様、高レベルの研究所があるときに活きる。特徴としては、資源を介して何でもできるビル・ゲイツのような柔軟性はないが、毎ターン直接文化点を得られるため安定している。


ビル・ゲイツとシド・マイヤーのどちらが強いのかは、判断の難しい問題だと思う。設計上はビル・ゲイツには最後に文化点が得られるメリットが付加されており、シド・マイヤーには科学力減少のデメリットが付加されているため、終盤の1資源と1文化点の比較ではより後者の価値が高いと判断されたのだと思う。確かに資源を文化点に変えるには手数が必要なのでそれは不自然ではないが、終盤の主要な得点源の価値を考えると概ね1資源の価値は1文化点を上回っているようにも思える。例えば時代Ⅲの驚異だと16資源を使って20点以上が獲得できるし、映画に置いた労働者は3ターン使えれば得られる文化点がかかった資源を上回る。

なのであくまで印象になってしまうが、得た資源の活用も含めてすべてのやりたい事を諦めずにすむほど十分な内政行動数があればビル・ゲイツのほうが強く、そうでないときはシド・マイヤーのほうが強い・・というような解釈がわりと妥当なのではないかと思う。内政行動数は終盤は余ってくることも多いため、手数がかかるからといって一概に価値が減算されるとは言えない。そして、勝負に勝てるのはたいてい内政行動数を順調に増やせているときなので、その意味ではビル・ゲイツのほうが勝率が高くなるのではないかと予想する。

いずれにせよどっちも強いし早くめくれるとは限らないので、科学力系戦術のときにはどちらか早くめくれたほうを取るのが正解だと思う。


アルベルト・アインシュタイン

旧版では人気があった(?)ようだが、ビル・ゲイツとシド・マイヤーの登場で霞んでしまっているように思う。時代Ⅲの技術カードを毎ターン何枚も出していくことは現実的でないし、せいぜい1.5枚程度で4~5点・・と考えると、文化点的にはシド・マイヤーの下位互換になってしまう。ただし書庫へ行けていたり、研究所も時代Ⅱの科学的方法止まりで納める予定なら上回る場合もあるかもしれない。そんなときによほど早くめくれたら、まあ取るのは有り。


マハトマ・ガンジー

主に文化力系の戦術で軍事力を思うように増やせず、いつ攻められてもおかしくないような状態に陥ったときに緊急避難的に取るイメージのある指導者。最低限の文化力2は付いており、これで内政に集中できるようなら悪くない。ただしガンジーの力をもってしても侵略を完全に防げるわけではないので、軽い侵略をそこそこ受けつつも地道に文化点を積み上げて逃げ切る方向性を目指すことになる。軍事行動数が莫大なプレイヤーがいてガンジーを取っても軍拡の手を緩められないようなら、まだチャーチルを取ったほうがマシ。

時代Ⅲにおける侵略や戦争の脅威を見積もるためにそれぞれのカードの枚数を数えると、以下のようになる。

・【侵略】強奪:資源+食料を合計7まで奪う,必要軍事行動数1:2枚
・【侵略】軍事介入:文化点7を奪う,必要軍事行動数2:4枚
・【侵略】急襲:都市建築物を2つ破壊,必要軍事行動数3:2枚
・文化をめぐる戦争:5+戦力差の文化点を奪う,必要軍事行動数3:6枚


このことから、他プレイヤーの軍事行動数が3以下なら、2枚しかない強奪以外は食らう心配がなくなるのでガンジーによる防衛効果は概ね機能すると言える。無論、軍事行動数はあとからでも増やせるので完全ではないが。一つ注意点は、最終ターンにギリギリ驚異を完成させるつもりで動くと、待ってましたとばかりに強奪で足元をすくわれてしまうこと。資源のやり繰りには余裕を持つ必要がある。

たいていは誰かしら軍事行動数4以上を持っていたり少なくとも時代Ⅲの途中にはそうなることが多いので、軍事介入までは覚悟する必要がある。軍事介入は4枚と枚数も多く、タイミングによらず一定のダメージを与える効果のため痛いが、ガンジーを取った以上は受け入れるしかない。差し引き文化点-14点は、考えようによっては都合の悪いイベントを仕込まれたのと同等の被害で、これを食らっただけで即勝てなくなるというわけではない。食らっても、相手にも軍事カードを引けないデメリットを与えていると割り切ろう。

ちなみに見落としがちだが、必要軍事行動数2の侵略・戦争カードで怖いのはむしろ時代Ⅱのほうなので、特に時代が変わった直後にガンジーがめくれたようなときには注意が必要。時代Ⅱのカードなら都市建築物の破壊も軍事行動数2ですむし、黄色駒や特殊技術を奪ったりする戦争カードもある。一番最悪なのは通称暗殺カードとも呼ばれる、指導者または未完成の驚異を取り除かせる侵略カード。これでガンジーを除去されてしまったら、もう降参もいいところ。

軍事力で圧力をかける相手側の戦略としては、このカードを握っておくことはガンジー対策にもなるのでそうなったら仕方ないが、ガンジーを取る前にはざっとでも他のプレイヤーの手元に時代Ⅱの軍事カードがどのくらい残っているかは確認しておいたほうがよいと思う。まあ通常たいていは軍事ボーナスカードなので、判断が難しいところではあるが。暗殺カードは2枚しかないので、自分が引いていたかの情報も重要。

軍事行動数6以上を持っている軍事力超特化プレイヤーがいる場合は、もうあらゆる侵略・戦争を防ぐことができないからガンジーを取る意味はほぼない。それでも取った上で神に祈らなければならない場面もあると思うが、相手がよほど軍事カード運に恵まれなかったり、下手なプレイをしない限りは勝つのは難しいと思う。


これまで内政中心で動く場合を述べてきたが、軍拡競争が常に激しく展開されて全員の拡大再生産が進まないまま時代Ⅲに突入したようなときには、低得点レースになることが予想され相対的に文化力2の価値が上がるので、軍事力で後れをとっていなくてもガンジーを取るのは有り。軍拡にうまく付き合いながら、効率的に文化点を得られる手段を探すようなプレイングになると思う。


ウィンストン・チャーチル

効果の方向性自体はガンジーと似ていて、取りたい状況もほぼ同じ。ガンジーのような自動的な防衛効果がない代わりに自ら軍事力を上げる術を与えてくれ、何もしないときはガンジーを上回る文化点を得られるという指導者。軍事力で後れをとっているときにガンジーがめくれるのを待っていられなければ、自ずとこっちを取ることになると思う。

取ったあとの戦い方はガンジーとは違い、なるべく早く軍事力で追いついて安定した文化点3の獲得を目指すことになる。さすがに軍事力があまりに大差になったようなときには適さない。軍拡競争の激しい低得点レースのときには、得られる文化点が多い分こちらのほうが有効。

あるいは、ナポレオンを取れずかといって文化点競争も厳しいという状況に陥ったときに、早めにめくれたら取ってひたすら軍拡を加速し、侵略や戦争による一発逆転を狙うような使い方もあるかもしれない。ただ通常は他のプレイヤーもこれを許さない程度には対応することができるから難しいと思う。ちょっと可哀そうだが誰か1人遅れていて、カモにできるプレイヤーがいるようなら有り・・かな?


チャーリー・チャップリン

劇場特化で先行逃げ切りを狙う戦術のときに、さらにそれを確実にするための指導者。オペラだと得られる文化点はチャーチルと変わらないから、取るなら映画まで発展させる計画は立てたい。軍事力に不安があるようならチャーチルを取ったほうがよい。

ここで言う劇場特化とは、科学力の発展をそこそこで切り上げて労働者を劇場に集中する戦術のことで、科学力を上げてから劇場へ向かうようならビル・ゲイツやシド・マイヤーのほうが優先度は高くなる。そうでなければ、時代Ⅱの指導者を継続したい場合以外はガンジーチャーチルチャップリンの中で初めにめくれた指導者を取るのが現実的だと思う。

ガンジーの項の話とも総合すると、科学力を上げられず劇場にも行けないほど絶えず軍事力強化が忙しくなった場合は、選択肢からチャップリンがはずれ、無条件で文化点を得られるガンジーチャーチルが残るというわけである。

 

以上です。長い記事をお読みいただいてありがとうございました。

何かあれば気軽に突っ込んでください。参考にさせていただきます。