都道府県連合パズル・ゲーム研究室

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ブラス:バーミンガム(白ブラス)の戦略論3【戦術】

産業の中でも強いと思われる「鉄,酒,紡績」それぞれを主体にした戦術について述べます。

(1) 鉄戦術
(2) 酒戦術
(3) 紡績戦術


白ブラスで勝利を目指す場合、まず初期手札に合った戦術を選ぶことが重要になります。商人タイルの配置が決まり、初期手札を見た時点で上記 (1)~(3) のどれを狙うと有利そうかを考えておくとよいと思います。その上で、ゲームが始まったら他プレイヤーの手も考慮に入れつつ、適宜戦術を修正していくとよいでしょう。

なお、一つの産業だけでは勝つには不十分なので、実際には複数の戦術を併用したり、他の産業も補助的に利用したりしながらゲームを進めていくことになります。

また、戦術分類には入れませんでしたが、鉄道の時代の序盤における鉄道敷設も重要な高得点行動になります。この点については、本記事の最後に補足します。


※:前回の記事と同様に、4人戦中心の話になりますのでご容赦ください。

  

(1) 鉄戦術

・初期手札に鉄の産業カードや、鉄を建てられる南部の都市カード(コールブルックデール,バーミンガムウォルソール,コヴェントリー,ダドリー)が複数あるときに選択肢になる。特にダドリーは競合しづらいので、これを持っていると有利。レディッチだけは孤立してしまうので選択肢外。

バーミンガムかコールブルックデールと市場を結ぶ運河敷設から入り、まずそこに建設する。1手目で運河を作って2手目で建設するか、手番順をうまくコントロールして入られないようにする。コールブルックデールは鉄スペースが2ヶ所あるので、より丸い。

・なるべくなら低得点のⅠは開発し、Ⅱから入りたい。そして、運河を伸ばしてⅢ(⇒Ⅳ)の建設を目指していく。

・北部の鉄スペース(ダービー,ストーク・オン・トレント)は他の鉄建設可能な都市と隣接していないため、自ら運河を伸ばして展開するのは難しい。他人の運河を利用できる状況ならこれらも選択肢になる。

・鉄は収入が増えづらいのが弱点なので、石炭をうまく併用したい。序盤にⅡの石炭を裏返せると補えて強い。

・酒との両立(鉄道向け酒戦術:後述)は強いので、可能であれば狙う。

・運河の時代にⅣまで建てきると高得点は入るが、酒など他の準備が行き届かず鉄道の時代に失速してしまうことが多い印象。運河の時代はⅢで止めておいて、鉄道の時代に向けて準備(酒,石炭,借金)をしたほうが安定すると思う。

・鉄道の時代に入ったら、高得点の鉄道敷設行動を優先しつつも、残りの鉄スペースに目を光らせⅣの建設を逸しないように気をつける。

・最後に、他プレイヤーが鉄戦術をやっているときにその鉄を使うことの是非について。私は気にせず使ってしまって問題ないと思う。むしろ使ったほうが、よほど供給過多でない限り本人が使いたいときにお金を使わせることができる。もしくは後々自分が鉄を建設したときに使ってもらえて利が返ってくる。鉄自体そこまで収入は増えないので、裏返るのが1~2ラウンド早まっても与えるメリットは少なくてすむ。すなわち使っても最も利を与えづらい資材だと言える。そもそも鉄が余ることはあまりないから、多くの場において誰の鉄を使ったとしても、使うタイミングだけの違いになると思われる。

  

(2) 酒戦術

・初期手札に酒スペースのある都市カード(ダービー,アトックシター,ストーン,バートン・オン・トレント,スタッフォード,ウォルソール,ヌニートン,コールブルックデール)が複数あるときに選択肢になる。特化するには後の引きも合わせて3~4枚ほしい。

・この中でもダービーは鉄道の時代の拠点として優秀なので、積極的に押さえたい。周囲の鉄道は概ね6~8点の高得点になり、かつ市場に隣接しているので鉄道の時代の初手で市場から石炭を引っ張ってくることができる。

・酒戦術は大きく分けて、鉄道の時代に向けて酒を溜める戦術(鉄道向け)と、運河の時代の終わりにまとめて売却して酒の得点で稼ぐ戦術(売却向け)があると思う。以下、それぞれについて解説する。


(2.1) 鉄道向け酒戦術

・運河の時代の終盤にⅡ以上の酒を2~3個程度造り、そのまま放置して鉄道の時代を迎える。

・鉄道の時代に入るとすぐに(鉄道敷設に)酒は使われるから、一気に収入が増えてその後のプレイが安定する。運河の時代の最終手で借金をしておき、自分で鉄道を敷ける資金を確保しておくとなおよい。

・誰かが運河の時代から売却に使ってくれれば、それはそれで儲けもの。

・鉄や石炭中心の戦術のときは、売却しないので自然とこのかたちになる。鉄と酒はうまく両立できると強い。

・理想形は、鉄道の時代の初手での「高得点の鉄道4本+酒2枚裏返し」による加速。そのために、運河の時代から酒とお金を準備する。運河の時代最終手の借金は、次の手番順をよくするためにも有効。鉄道は北部のダービーやアトックシター周辺を狙うとよい。

・基本的に、運河の時代中にⅡ以上の酒を造りまくりさえすれば成立するから、やり方は簡単で初心者でも実践しやすいと思う。そのためのお金は、序盤の収入に加えて1~2回借金すれば十分確保できる。Ⅰの酒を開発で葬るのを忘れずに。


(2.2) 売却向け酒戦術

・運河の時代の終盤に複数の製品をまとめて売却し、酒を裏返す。

・製品や酒の建設に手数がかかり、計画性が必要になるのでやや難易度が高い。(商人の酒に依存しないため、計画自体はしやすい。)

・鉄道向け酒戦術よりも早くから収入が得られ、運河の時代の終わりに酒の得点も得られるのはメリット。

・紡績、木箱、ツボの特化を目指している場合は自然とこのかたちになる。特化を目指していない場合は、木箱がやりやすいと思われる。

・Ⅲの酒を裏返せると7点で強く、その場合余ったⅡの酒が鉄道向けになったりする。しかし余裕がなければ無理せず、Ⅱの5点で諦めて鉄道の時代に向けてお金を蓄えたほうが無難。

・紡績特化の場合、Ⅱの紡績2つを酒とともに売却する。展開によってはⅢの酒も狙えるが、紡績戦術では鉄道の時代のキダーミンスターとウスターの間の確保がとても重要なので、運河の時代の最終手は無理せず早手番の確保に努めたほうがよいと思う。

・木箱へ行く場合、Ⅱの木箱2つか、1回開発してⅡとⅣの木箱を売却することになると思われる。前者は売却向け酒戦術の中でも一番手数がかからないので、酒を造れる都市カードをたくさん引けていれば完全に酒に特化してⅢまで建てきり、売却時にⅢの酒2枚の裏返しを狙うことも可能。Ⅰの木箱は、あらかじめ序盤の収入要因として商人の酒で売却しておくとやりやすい。

・Ⅴのツボを目指している場合、運河の時代は通過点としてⅢのツボの売却に酒を2つ使うことになる。あまり手数に余裕なく、他人の運河や石炭を利用できない限りはⅡの酒がやっとだと思われる。(もはや酒戦術とは言えないかもしれない。)

・いずれにせよ、鉄道の時代に向けて収入が安定する戦術なので、その後も収入を増やし、借金の回数を極力減らして手数を有効利用する健全経営の方向に持っていけると一番活きると思う。

  

(3) 紡績戦術

・初期手札にキダーミンスター、ウスターの都市カード、もしくは紡績の産業カードが2枚あって、かつ南部の3ヶ所の市場のどこかに紡績を売却できる場所があれば狙える。売却地が北部しかなくても、流れ次第で他人の運河がうまくつながれば選択肢になり得る。

・条件は緩いが、競合すると厳しくなる。単独なら売却中心戦術の中では最強だと思う。

・原則は、運河の時代にキダーミンスターとウスターにⅡの紡績を建設して売却し、鉄道の時代にもここの酒スペースを押さえた上で、Ⅳを中心になるべくたくさんの紡績を売却する。

・Ⅳの紡績は12点と高得点なので、できれば3つすべて建てたい。競合がいなければ、商人の酒も利用して鉄道の時代の最終手でⅢも合わせ4つの紡績をまとめて売却できるので強い。

・隣接得点の高いⅡの紡績に運河や鉄道を絡めて、効率的に得点を稼ぐのもポイント。

・他人の運河を利用して売却できるなら、Ⅱの紡績の1つを北部(ダービー,ストーク・オン・トレント,リーク,ベルパー)に建てておき、鉄道の時代の起点にするのも悪くない。鉄道の時代に4つの紡績を建てようと思ったら、キダーミンスターとウスターだけでは足りず、北部の紡績スペースも必要になってくるため。

・Ⅰの紡績は、序盤に1つだけ建設して売却するパターンと、3つすべて開発するパターンがある。鉄道の時代にはⅢの開発も有効。(ⅢがⅣになり、9点が2つ12点に変われば6点プレイ。)

・紡績だけで勝つのは難しいから、鉄か酒のどちらかは併用したい。(Ⅳまで建てたい)

・鉄戦術との併用ケース:コールブルックデールかバーミンガムへの運河敷設から入り、そこに(Ⅰは開発して)即Ⅱの鉄を建てつつ、キダーミンスターとウスターへ運河を伸ばす。早期にⅡの石炭を裏返して収入をアップできると安定する。開発はさらに2手必要で、Ⅰの紡績3枚とⅠの酒1枚。残りのⅠの酒をキダーミンスターとウスターの間に建てて売却時に利用すれば、手数的にも無駄がない。鉄道の時代は、ⅢとⅣの鉄を建てる手数が必要なために、かなり鉄道敷設を抑えないと4つの紡績を売却するのは難しい。無理に狙わず2~3個で諦めてもよい。

・酒戦術との併用ケース:鉄の開発と建設に手をかけない代わりに、酒の建設に運河の時代から手数を使っていく。酒では序盤の収入を得られないため、Ⅰの紡績や石炭、もしくはⅠの鉄(収入のための捨てタイルのイメージ)で初期収入を得てから展開する。バーミンガム先へのⅠの紡績の売却から入るのが一番やりやすいと思う。初手で紡績を建設すれば、周囲に意思を見せつけて、競合が現れないように牽制する効果もある。その場合、開発はⅠの紡績2枚とⅠの酒2枚の2手。Ⅱの紡績売却のための酒は、Ⅱ以上のものをキダーミンスターとウスターの間ではなく他の場所に建設する。この時点ではⅢの酒は無理に狙わなくてよい。鉄へ行くよりも収入が増えやすいので、最終的にⅣの酒まで建てられればこっちのほうが強いと思う。鉄道の時代の手数にはより余裕があり、4つの紡績売却も狙いやすい。

・どちらのケースでも、鉄道の時代開始時の手番順をよくしてキダーミンスターとウスターの間を死守することは重要なので、運河の時代終了直前まで無理に建設は続けずに、前半の最終ラウンドは「売却+借金」のお金不使用で終えておくのが無難。(どうしても難しいときもあるが)

・対抗側としては、運河の時代の終盤にキダーミンスターに石炭を建設しておくと、先手番を確保できればウスターとの間に先に鉄道を敷いて妨害できる。これは「6~8点+酒スペース確保」の鉄道なのでおいしい。コールブルックデールの石炭からでも、2本鉄道を敷けば届く。これをやられると、紡績戦術側はカノック先の独占酒スペースを確保できない限り最後の売却時に酒の建て替えが必要になり、うまく鉄道を展開できないとかなり得点が減ってしまうことになるので痛い。カード的に紡績を建設しづらい状況に追い込まれた場合、特化は諦めて鉄道中心の立ち回りにシフトするのも有りだと思う。

・鉄道の時代に度々酒を使って効率的に2本ずつ鉄道を敷ける流れになった場合は、たくさん紡績を売却するよりも鉄道を増やしたほうが、対戦相手の鉄道の得点が減ることによる相対評価も含めて有利になることが多いと思われる。そういうときは、流れに任せて鉄道敷設を優先し、紡績の出荷数は減らしてかまわない。一般に、市場価格3金程度の石炭で2本合わせて12点以上の鉄道を敷けるようなら、鉄道優先でよいと思う。

・高価なⅣの紡績建てきりを目指す以上、大量のお金が必要になるので、序盤から一貫して効率的にお金を使いつつ、丁寧に収入を得ていくことはとても重要。終盤にはどうしても何度か借金が必要になるが、その回数を1回減らせるだけでも鉄道が1本増えるか鉄道がⅣの紡績に替わる結果を生み、4~8点程度は増える。

・運河の時代の序盤は、可能なら開発や安い運河敷設を先にして1回目の借金を極力遅らせる。(最初の収入を得られる前に、借金の手数を確保できた場合は別。)鉄道の時代に入ってからも、手数が足りているうちは石炭建設&即裏返しで現金と収入を得られる機会を逃さないようにしたい。(他の戦術のプレイヤーと比べ、石炭建設のメリットが大きい。)

・紡績をⅣまで全部建てきって売却するには、何手も先まで綿密な手数&金量計算が必要になる。その点、高い計算力が要求される戦術だと思う。反面、やる事は決まっているので計画自体は比較的容易。金量計算以外は、残りの紡績建設スペース(足りるかどうか)にのみ気を配っていればよい。

・具体的には、収入により得られる金額と建設にかかる総金量から借金の必要回数を導き出し、残り手数がちょうど足りるように逆算して動く。手数が余っている以上は先に高得点の鉄道敷設を行ないたいので、事前に計算しておく必要がある。鉄道はそこまでたくさん敷く余裕はないので、限られた場所に効率的にを心がける。

・ただし、石炭の市場価格は変動するため、必要金量についてはきっちりした計算ではなく緩い見方をすることになる。ギリギリを狙うと石炭を締め上げられたときに詰むので余裕を持ちたいところだが、余裕を持ちすぎても鉄道の得点が減ってしまうので判断が難しい。目安としては、周囲が全員健全経営で収入が潤沢な場合は、石炭の価格が高騰しても誰も痛くなく、特に終盤は上がる一方だと思われるので、余裕を持った資金繰りを心がけたほうが安全だと思う。言い換えれば、お金に苦しんでるプレイヤーが他にいる状況のほうが、(その人が石炭の価格を下げてくれるので)紡績戦術は強いと思う。

・また、最終ラウンドは「酒建設+売却」で固定なので、収入が酒の建設価格よりも多い場合は、最終の1ラウンド前までに足りるように金量計算を行なう必要があることに注意。

  

● 鉄道について(補足)

鉄道敷設はそれ自体非常に優秀な得点行動なのですが、ゲーム開始時から狙う類のものではないこと、また誰もがある程度敷くべきもの&平等に敷けるものであることから、戦術の範疇には組み込みませんでした。

鉄道は得点の高い所だと北部を中心に、1本あたり6~8点になります。これは酒を使って2本同時に敷けたとすると、1手で12~15点にもなり、Ⅳの紡績の12点をも上回る高得点です。価格もⅣの紡績は「18金+石炭+鉄」、鉄道2本は「15金+2石炭(+酒)」ですから、石炭が高騰していない限りは鉄道のほうが安いくらいです。

ここまで優位性がはっきりしていることからも、戦術に依らず鉄道の時代に入ったらまず高得点部への鉄道敷設に集中すべきです。ここの争いを放棄して他の事をやってしまうと、それだけでだいぶ不利になってしまうと思われます。

ただし、カノック先など酒スペースを確保したい場合は、得点よりも用途が優先されます。また、バーミンガム周辺は木箱がどれだけ建てられるかに依存しているので、高得点になる可能性は高くても木箱へ行かない人が鉄道を独占しづらいのはあると思います。ちゃんと木箱をバーミンガムに建ててもらうためにも、木箱へ行っているプレイヤーに次ぐくらいの分量バランスを意識するとよいでしょう。

6~8点の部位が埋まり、残りが5点以下の場所だけになると、それ以降も引き続き鉄道を敷き続けるかの選択肢が生まれると思います。5点でも十分強いので、他に優先すべきことがなければ敷き続けていってよいでしょう。Ⅳの鉄や酒建設のためのスペース争いが発生しているときは、ここでいったん鉄道の展開が緩やかになる印象です。Ⅳの紡績建てきりを目指している場合も、鉄道はこの辺りで収めになると思います。


最後に、戦術的な観点で見た場合の話ですが、運河の時代の最終手で借金をしてお金を蓄える場合、他に有効手がないときこそあれ、これは鉄道方面に寄せる戦術的行動だと言えると思います。つまり、他の事をするよりも鉄道敷設のための資金準備をしたほうが有利だと判断しているわけで、この選択機会は全プレイヤーに訪れることでしょう。

一つ戦術的にコントロールできることがあるとすれば、酒は自分で用意しておいたほうが鉄道の2本同時敷設場所の選択肢は増えるので、例えばダービーなどの北部の要地を確保した上で、酒自体は離れた場所に用意しておくと、自分だけその酒を北部にも使えるから、より北部の鉄道を独占しやすい状態で鉄道の時代を迎えられると思います。

ただ一般には、鉄道は狙って特化するものではなく、流れに合わせて打っていく過程で(それが一番有利な状況になったために)自然と増えてくる性質のものだと思っています。

 

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