都道府県連合パズル・ゲーム研究室

パズルやゲームに関する研究結果をアップしていく予定です。

グレートウエスタントレイル:応用戦略考察【インタラクション】

しばらく間が空いてしまいましたが、これまでに紹介した基本戦略やさまざまな戦術を踏まえた上で、最後に一つ応用的な話をします。どんなボードゲームでも少なからず面白さの要素になっている、プレイヤー間のインタラクションについてです。

グレートウエスタントレイルは、比較的他者からの妨害は受けにくく自らの計画で進めやすいタイプのゲームだとは思いますが、それでもいくつか重要なインタラクション要素があります。実際、戦術をわかっている者同士で対戦したときには要所要所で駆け引きが生まれ、それが勝敗の分かれ目になったりします。

個人的にもグレートウエスタントレイルで一番面白いのはこのインタラクション部分だと思っており、本ブログの構成もまず先に基本的な戦略を一通り理解していただいた上で、インタラクションを考えるという順序になっています。もし最初は自分で考えたいという方は基本戦略の記事は読まないほうがいいかもしれませんが、グレートウエスタントレイルは「見た目複雑、知れば単純」という側面が大いにあり、ベース部分の理論はさっさと学んでしまうのも手だと思います。一度インタラクションを楽しめる段階まで到達すれば、きっと何度プレイしても飽きないことでしょう。^^


では、具体的な話に移ります。以下の4つのインタラクション要素について解説します。

(1)労働者
(2)私有建物
(3)牛
(4)駅長タイル


他にも目的カードなど細かいものはありますが、長くなってもあれなのでプレイ中に気にしすぎるとかえってマイナスになりがちなものについては省いています。すなわち、上の4つはそれが発生する状況においてはどれも重要ということです。


(1)労働者

労働者は戦略の根幹であり、ゲームの中でも最も重要で頻繁に発生するインタラクション要素です。当然ですが労働者の数は限られており、相手に先に取られてしまったら取ることができません。労働者を継続的に雇う必要がある序盤から中盤にかけては、相手が何を取りたそうにしているか、自分が何を取れそうかを常に意識しながら動くことが求められます。

初回の労働者雇いと2回目以降では少し様相が異なるので、分けて説明したいと思います。


<初回>

最初に労働者を雇うときに重要なのは、専ら「勝ちを狙える戦略につなげる雇い方ができるかどうか」です。考え方としては、労働市場に目当ての労働者がたくさんめくれていてゆっくりでも大丈夫そうなら、先に金策してから効率的に2人同時雇いを目指すか・・とか、逆に勝てそうな雇い方が1つしかなくそれを誰かにやられると厳しいという状況なら、多少効率を犠牲にしてでもAから入って核となる労働者を先に押さえてしまおうか・・といったような感じになります。

必然的にみんなが同じ手を取っていったら手番の早い人が先に雇うことになるため、上位番手が甘えて金策から入ったら、下位番手には追従するか先にAから入るかの選択肢が生まれます。そんなときに上記の基準を頭に入れておくと役に立つと思います。

勝ちパターンの雇い方についてはこれまでの記事でも細かく述べているためにここではざっとにしておきますが、主にカウボーイ2人か技師2人、10b+8bを狙える環境においては職人絡みです。私有建物のラインナップをランダムで決める場合は、それによる変動もあるのでこの場だとカウボーイは厳しい、あるいは技師は厳しいといったこともあり得ます。


また別の観点として、労働者がたくさん残っていて戦略の選択肢が複数あるときには、「マウントを取ることによる優位性」を意識することも大事になってきます。以下、労働者別に見ていきます。

それが特に顕著なのは職人です。職人は中盤に4人に乗せられないと大きく効果が落ちてしまうので、なるべく競合を減らしたいところです。通常、4人戦での平均的なめくれ方だと中盤に職人4人を達成できるのは2人までであり、3人目は入りづらいのですが、10bと8bのある場ではその強力性からどうしても狙わないと勝てないと考えて参入してくる・・ということがあります。(そういった事をプレイヤーがわかっている場合の話ですが。)そうなると、職人4人を達成できなくなるリスクが上がる上に仮に達成できても無理が生じ、他の戦略を取っている1人に負けてしまう可能性が高くなります。

そういった事態を防ぐためにも、2人目の参入者がしっかりマウントを取って、他のプレイヤーに職人戦略を諦めさせることは大事です。例えば、場に職人が2枚残っていたら、最初は「職人+カウボーイ」や「職人+技師」から入ったほうが効率が良い場合であっても、職人2枚を取って枯らしてしまったほうが安全ということです。

次に技師ですが、技師は「自分だけ独占できるようなら有利」というのが正しいです。技師を早々に3人以上にできたのが自分1人だけなら、当面目当ての駅長タイルを他のプレイヤーに取られる恐れがないために、ゆっくり手を進められます。技師3人のときにあえて列車を進めずに建物の建設を優先させ、4人にしたあとでより効率的に列車を進めていくといった動きも可能になります。ただし、10bと8bのある場ではモタモタしていると職人戦術のプレイヤーに追い抜かれてしまうため注意が必要です。以前の記事でも述べたように、10bと8bがあると技師だけで後半の駅長タイルを狙うのは困難です。

話を戻すと、独占できると有利というのは、例えば最初にAを踏んだときに技師が2枚めくれている場合と4枚めくれている場合を比較したときに、前者のほうが技師戦術の優位性が高いということです。後者の場合は自分が2人雇っても残り2枚が他の1人のプレイヤーに渡れば競合が生まれてしまいます。その場合も互いに列車を追い越しながら進めていけるメリットこそありますが、それよりも駅長タイル争いのデメリットのほうが大きいと思います。

最後にカウボーイですが、カウボーイは他の2種の労働者とは違い、独占することによる優位性は低いと考えています。労働市場にカウボーイが2枚しかめくれておらず、それを自分が独占できたときには先に高得点の3牛や4牛にアクセスできて一見有利なように思えますが、特に対人戦ではカウボーイは戦略のわかりやすさから人気があり、みんなこぞって取ろうとする傾向があるために、そのあとで継続してカウボーイを雇っていくのに苦労します。4人目がスムーズに雇えればまだいいですが、それが叶わずに5牛へのアクセスが遅れると大きく得点が減って、他の戦術を取っている人に負けてしまう可能性が高くなります。

一方、最初に3~4枚のカウボーイが労働市場にめくれているような潤沢場の場合は、他のプレイヤーにも必要なカウボーイが行き渡りやすいためにその後も順当にめくれていけば雇い続けられないリスクは少なく、得点を伸ばしやすい印象です。家畜市場の牛のめくれ方によっては競合が致命的になる場合もありますが、たいていは2人分くらいを賄うのに十分な3牛や4牛はめくれるため、序盤の拡大再生産に支障はないと思います。

つまり、カウボーイ戦術の場合は技師戦術とは逆で、最初にカウボーイがたくさんめくれているときのほうが有効だということです。4人目のカウボーイが早ければいち早く5牛へアクセスできて有利なのは確かなので、マウントという意味では「独占」ではなく「先行」することを意識するとよいと思います。


<2回目以降>

2回目以降は、最初に雇った労働者の方向性に合わせてさらに労働者を追加していくことになりますが、ここにはまた別の難しさがあります。グレートウエスタントレイルにおいては、一部の例外を除いては一度労働者を雇ったらそれ以降に戦略を変える余地はなく、目当ての労働者を追加できないことはそのまま得点の大幅な減少に直結します。なのでその労働者が労働市場に残っているかどうかは、常に意識して動く必要があります。

ここのインタラクション要素は大変重要で、おそらくグレートウエスタントレイルの中で一番と言っても過言ではないと思います。労働市場に労働者が追加されるのは出荷のときだけですので、競合が多かったりなどして雇いたい労働者が枯渇しているときには、他のプレイヤーの出荷によって出てきた直後にAを踏めるように計画して動くことが大事になってきます。

これは相手があることなので必ずしもうまくいくわけではありませんが、あと何回の出荷で目当ての労働者が増えるのかや、それに関わりそうなプレイヤーがあと何手で出荷してくれそうかを読むようにすると、成功しやすくなると思います。一番好都合なのは、自分の前手番のプレイヤーの出荷がこのタイミングになるときですが、そこは展開の運次第です。


また、Aのある位置によっても狙いやすさは異なります。Aがスタート直後にある場合から見ていきますが、このときは例外なく先に出荷したプレイヤーから順にAを踏むことになります。たとえ踏みたくなくても他のプレイヤーの出荷を待って牛歩することができないので、比較的調整しづらい配置です。調整するとすれば出荷前のゴール手前になりますが、既にゴールの一歩手前に他のプレイヤーがいて確実な出荷が見込めるとき以外は、こちら側にコントロール権はありません。同じ労働者を狙うライバルとともに互いに牛歩していても他の戦略のプレイヤーに対して遅れてしまうだけなので、目当ての労働者がほぼ確実に相手に渡るという状況でなければ、牛歩はせずに思いきって出荷に飛び込むのが正着だと思います。実際、競合以外のプレイヤーが出荷に絡んでくる場合は基本的に労働者は増えやすくなるわけで、先にAを踏める以上はさっさと出荷してしまったほうが得だと思います。出荷すると読んだプレイヤーが出荷しなかったら、そのときは潔く諦めましょう。(※1

Aが中間にあるときには、直前の牛歩もいざとなれば可能で調整はしやすいです。とはいえこの場合も牛歩の応酬になるとルーズルーズなのは同じなので、牛歩した結果高確率で目当ての労働者を取れる状況でなければ、牛歩はしないほうがよいと思います。必然的にライバルが上手番だと先に踏まれてしまうため牛歩が意味をなさず不利で、逆に下手番だと有利です。争いが生じた場合は、概ね下手番側が諦めることになるでしょう。ライバルが対面のときは状況次第で、目当ての労働者が登場する出荷タイミングが上手番のものなら直後に踏めるため有利で、下手番のものなら逆に踏まれるため不利です。このように状況ははっきりしているため、比較的予測はしやすいと思います。

最後にAがゴール近くにあるときですが、この場合も基本は中間にあるときと同じで牛歩は可能です。ただし、通常Aの前にも踏みたい建物がいろいろあるために、お金の量や他にやりたい事がありそうかなど、より複雑にさまざまな事が関わってきます。出荷で得たお金をそのまま労働者に投じる流れにならないことも多く、間に金策を挟むとそこに隙が生まれます。このように労働者以外のメリット、デメリットまで総合的に考えて判断する必要があり、よりハイレベルなプレイが求められると思います。ライバルが他の事を優先したら、牛歩とは逆に追い抜いてこちらは労働者を優先するといった選択もできます。


繰り返しますが、この追加の労働者に関するインタラクションを乗り切って拡大再生産を進められるかどうかは、得点への影響が大きくまともに勝敗の分かれ目になります。カウボーイ戦術のときは4人目のカウボーイから5牛をどれだけ早く入れられるかに関わりますし、職人へ行ったときには4人目の職人を雇えるかどうかで雲泥の差です。慎重に読みを働かせ、正しいタイミングでAを踏むことを目指しましょう。


(2)私有建物

私有建物によるインタラクションには、次の3つの要素があると考えています。

① 建設位置
② 通行料建物による妨害
③ 歩数調整


① 建設位置

ルール上、建物はどのスペースにも1つしか建てられないため、常に早い者勝ちです。競合すると先に建てたほうが基本的に利を得るという点で、これも重要なインタラクション要素です。特に顕著なのは、Dの位置に頻繁に利用される共有建物があるときの直前の通行料建物で、これを建てるのは1番手の特権です。

他にも災害タイル先のスペースや、度々利用したい建物の手前に建てる移動建物、10b+8b狙いのための連続したスペースなど、競合する可能性のある場所はいろいろあることでしょう。具体的な地点だけでなく、ルートの前半、中間、後半といった大まかなカテゴリーにおける競合もあるでしょうし、森の位置、災害タイルの溜まった共有建物間に建てる通行料建物・・と、挙げれば次々に出てきます。

これらさまざまな要素が関わり、候補となる場所が少なくライバルが多いほど先んじて建物を建てる優先度は上がります。それを適切に判断するには、常に場の状況に気を配り、他のプレイヤーが何をしたいのかを考えながらプレイする必要があるためにかなりレベルが高いかもしれません。ただ予想をはずすこともあるライバルの動向はともかく、場の状況については公開情報なので、「今回はこういう特徴を持った場だな…」というようなことは、プレイを重ねてパターンを覚えていけば徐々にわかってくるのではないかと思います。


② 通行料建物による妨害

通行料建物の効果は、グレートウエスタントレイルのゲームメカニクスの中で唯一自分の手番外に手持ちのアイテム(お金)を変化させるインタラクション要素です。序盤に取れるお金は少量のため過信は禁物ですが、うまく使えばジワジワと相手にダメージを与えることができます。

お金の問題以外にも、災害タイルのめくれ方が偏ったときには一ヶ所に複数の通行料建物が集まりやすく、それは場に大きな影響を与えるため注意が必要です。つまり、そのポイントを通過するときに多くの歩数を消費することになり、必然的にその直前や直後の共有建物で止まらなければならない流れになるために、それらの共有建物を頻繁に有効利用できる戦略が相対的に強くなるということです。


③ 歩数調整

通行料建物が密集したときの話とも重なりますが、このようにみんなが通らざるをえない場所に建てた建物は、そこで止まって利用しない限りは(自分も含めて)プレイヤーの歩数を1歩消費させる効果も持ち合わせています。これは自分が建てる建物に関してはコントロール可能なことで、特に他のプレイヤーへの影響を考えて行動を起こすときにはインタラクションを発生させます。

例を挙げると、4人戦で自分は「技師+職人」の戦術を取っていて、カウボーイ特化戦術のライバルがあと4歩で牛購入のEに到達できる状況だったとします。そんな中、自分の手番でBに到達しました。さて、建物どうしようか・・と考えたときに、よく見ると今ライバルのいる位置とEの間には、他のプレイヤーの私有建物やCといった、比較的カウボーイ特化戦術には利用価値の低い建物しかありません。

そんなとき、そのライバルとEの間にさらに建物を建ててEまでに5歩かけさせるようにすると、ライバルは1手でEまで到達できずに弱い手を挟むことを余儀なくされます。これはこのターンに限ったことでなく、黒枠マスディスクをはずして移動数を増やすまで毎回そこを通るときに繰り返されます。今から戦術変更してCの利用価値を上げるのも、以前にも述べたように「カウボーイ+技師」の組み合わせは根本的に弱いので非効率です。

正しく拡大再生産を進めていけば最終手が10点行動になるようなグレートウエスタントレイルの世界において、このように何手も弱い手を踏まされるのは大きなアタック効果であり、こうなるとカウボーイ特化戦術は大幅に弱体化してしまいます。勝負を決定的にするほどのインタラクション要素だと言えるでしょう。

上記の例は少し極端だったかもしれませんが、ここまで都合が良くなくても全体的にカウボーイ特化戦術は踏みたい建物が少ないので、「技師+職人」側のカウボーイ殺しの手法として使える場面は結構多い印象です。一発で達成しなくても、ジワジワと歩数をかけさせたいところに建物を集めるような戦い方も場合によってはできますし。少々高度なテクニックですが、頭に入れておいて損はないと思います。


(3)牛

家畜市場にめくれた牛カードに関するインタラクションの話です。これはめくれ方が平均的であれば特に多人数戦では過度に気にする必要はないと考えていますが、偏ることも結構ありますしそういうときには主にカウボーイ戦術のプレイヤーにとって大事になってきます。

3牛と4牛でどちらかが極端に少なかった場合は、少ないほうから確保する必要に迫られます。特に3牛はカウボーイ戦術以外のプレイヤーも気軽に手を出しやすいため、油断しているうちに枯渇してしまわないように注意が必要です。仮に4牛から入ったほうがデッキの効率が良い場合にも、安全に3牛から確保しにいくといった戦略は往々にしてあります。

5牛については初めからたくさんめくれていたら、いち早く4人目のカウボーイを投入する優先度が高くなります。逆に1枚もめくれてなかったら、(そもそもカウボーイ戦術には不利ですが)急がずに先に4牛や3牛をしっかり揃えることに集中したほうがよいでしょう。1枚だけめくれているといった場合は、その1枚をさっさと12コイン払って確保してしまうのも有りです。

カウボーイ戦術以外のプレイヤーも、デッキ圧縮戦術のときなどいずれ3牛が必要になる場合は、そのめくれ具合を気にかけつつ枯れそうなら早めに1枚確保しないと危ないです。6aを利用する予定なら、それは黄牛になります。

まとめると、牛カードは基本的には素直にデッキの拡大再生産が進行するように買っていけば大丈夫なのですが、家畜市場の状況によっては時折上記のようなインタラクションが生まれ、他のプレイヤーがどの牛を欲しがりそうかまでを視野に入れて、購入する牛の優先順位を決める必要が出てくる・・といったところです。


(4)駅長タイル

駅長タイルは場に5種類、それぞれ1つしかなく先に駅に到達できたプレイヤーに優先的に取る権利が生まれます。駅長タイルの競合が発生するのは基本、序盤から技師戦術のプレイヤーが複数生まれるような技師潤沢場か、10b+8bのコンボが絡んでくるときだけだと思います。後者の場合はとにかく早め早めに列車を進める・・という単純な戦略しかなく、コンボが決まった相手に対して技師戦術側が対抗するのは困難なので、ここで話題にするのは専ら前者の場合です。

序盤から3人が競合するのは稀なので、2人が技師を2枚ずつ取って共に技師3人体制になった場合を考えます。このとき、駅までの列車の歩数を数えてみるとわかりますが、仮に両者が交互に列車を動かして同じ駅を目指した場合は、2番目の駅へはあとから列車を動かした側が、3番目の駅へは先に列車を動かした側が先に到達することになります。ちなみに1番目の駅長タイルを早期に取るのは、技師戦術のときには労働者減少のデメリットが大きく非効率なので、ここでは考えません。

しかし、3番目の駅に欲しい駅長タイルがある場合にも、一直線に目指さずにいったん2番目の駅に入るようにすれば、後から列車を動かした側が優先権を得ることになります。なぜなら、相手が自分よりも先に行ってくれれば、その列車を飛び越えることで1手で次の駅まで到達できるからです。一般に技師3人の相手が駅に居座っている場合、その先に列車を進めるのは危険です。牧場主コマの位置関係が離れてて2手連続で列車を動かせるようなときでなければ、駅から駅へと悠々と渡り歩かれてしまうことになります。

ただそうなると、「後から列車を動かしたほうが有利」という結論になって、互いに列車を動かせなくなってしまいマイナスです。そこで、もっとさかのぼって1番目の駅に入るプランまで考慮してみます。すると、1番目の駅には先手側が先に到達できる(「自分 → 相手」の順に動かしたときに相手側は1歩足りない)ために、ここまで視野に入れるならば先に列車を動かしても大丈夫です。ただし、これをやると場合によってはその先の駅に到達するまでの手数が1手余分にかかってしまうことになるので注意が必要です。

こうした競合関係のすべてが解決されるのは、どちらかが4人目の技師を雇ったときです。先に技師4人になれば、相手の列車が前にいるときは飛び越えて必ず1手で駅に到達できますし、後ろにいるときには到達できなくても相手も1手では自分の列車まで届かず、追ってくることができません。稀に他のプレイヤーの列車が絡んでそれが覆されることもあるかもしれませんが、一般にはそのような変遷をたどります。

なので本来は、駅長タイルへのマウントを確保しようと思ったら、我先にと列車を進め合うよりもいち早く技師4人体制を築き上げることのほうが重要です。ただ相手があることなので、ライバルが列車を進めたのにこちらは進めないというわけにはいきませんが。もし相手が思慮なく、駅にいる自分の列車を横目に追い抜いていってくれるようであれば、しばらく3人のまま進めても概ね問題ありません。戦略をわかってたら、相手も下手に追い抜かずに技師4人にしてから一気に駅を狙おうとするはずなので、やはり4人目の技師の獲得争いが先に発生すると思います。

あるいは、列車を進める任意アクションを利用してマウントを取りにいくという手段も、状況によってはあるかもしれません。ただ技師を雇ったことにより本来列車は進めやすくなっているにもかかわらず、任意アクションまでそれにかけてみすみす2コインを得る機会を逃すのは、あまり得策じゃないと思います。少し進んだ中盤の歩数調整に利用するというのなら有りですが、序盤はお金のやり繰りもギリギリなことが多いので、選択肢になるのは手札や住居タイルの運が良く通常よりもたくさんのお金が入ってきたときくらいでしょうか。相手がこれをやってきたら、潔く第一希望の駅長タイルは諦めて、他に狙いを切り替えたほうがよいと思います。

そもそも、このような駅長タイル争いが発生してる時点で他の戦術のプレイヤーに対しては遅れを取っていてマイナスなので、まったく気にせずに列車を進めることに専念して、駅長タイルは流れで分け合いながら取っていくことにしたほうが、自分の勝率を上げる観点ではプラスかもしれません。少なくとも列車を先に進めるということに関しては、追い抜き合えば共闘できますし。他の戦術のプレイヤーが伸びそうかどうかや、私有建物のラインナップ的にどれくらい技師有利な場かといった、状況次第な面はありますけれども。

ちなみにもっと低レベルな話で、主にカウボーイ特化戦術のプレイヤーが何かしらの理由でCやGを踏むことになったときの列車の1歩移動に関しては、技師戦術のプレイヤーの中にまだ列車を進めていない人がいる場合は行なわないほうが無難です。こちらのメリットがあまりないにもかかわらず、相手に列車を飛び越えさせるメリットを与えてしまうからです。ただし既に誰かが1歩移動を行なっていて、効率的に列車を進められる状況のときは悩ましく、そこはケースバイケースですが。カウボーイ特化戦術のプレイヤーが2人いる場合は、Gなどで手札交換を兼ねながら互いに飛び越え合って輸送費を軽減できる状態に持っていくのは悪くないと思います。

 

以上のように、比較的戦術の計画をしやすいタイプのゲームであるグレートウエスタントレイルにも、さまざまなインタラクション要素が存在します。まだまだここに書き切れていない細かいものもありますし、グレートウエスタントレイルの奥の深さを考えると、他にも私が見落としている重要なものが残っているかもしれません。記事の予定はこれで終了になりますが、今後も皆さまの研究に期待したいところです。


私の記事で、多くの方にグレートウエスタントレイルの面白さが伝われば嬉しい限りです。需要があるかはわかりませんが、戦術解説のご要望などあれば、関東圏の遠くない範囲であれば喜んで伺いますので気軽に私のツイッターまでお声がけください。(埼玉県川口市在住です。どのくらい遠くまで行けるかについては、具体的な話がないと申し上げづらいのですいません。)

https://twitter.com/Jihad_Survivor

私も文章をまとめるのが苦手なもので、どの記事も大変長く忍耐力がないと読めないようなものになっているかと思うのでその点は恐縮です。ただ中身は結構単純な事も多く、実物を前にしてご説明すればスムーズに伝えられることも多いのではないかと考えます。そして、グレートウエスタントレイルの真の面白さは、そのようにして基本的な事柄を理解した先にあると確信しています。

当面は、私の行くゲーム会にも常にグレートウエスタントレイルを持参する予定です。他のゲームに没頭しているときもあるかもしれませんが、常にインストを優先しますので興味のある方は気軽に声をかけていただければと思います。「面白いゲームですよ!」と、声を大にして言わせていただきます。^^


では皆さま、お読みいただいてありがとうございました。

 

  ※1:状況が少しわかりにくいと思うので例を挙げます。

1番手と4番手がカウボーイを争っており、現在労働市場にカウボーイはゼロ、あと2回の出荷で1人のカウボーイが雇えるようになる状況だとします。そして、1番手と4番手は共にあと2歩で出荷できる位置におり、他の戦略の2番手は出荷からはるか遠い位置に、3番手は見たところ次の手で出荷するかどうか半々といったところ。それで現在は1番手の手番です。

このとき1番手の選択としては、出荷した場合に3番手が出荷してくれれば無事カウボーイに有りつけますが、3番手が出荷してくれないと4番手に牛歩され、カウボーイは4番手に渡ってしまいます。一方、1番手が牛歩した場合は逆に3番手が出荷すると、それを見た4番手が即出荷することでこの場合もカウボーイは4番手に渡ります。

すなわち、いずれにせよカウボーイの行き先を決める権利は3番手が握っているわけで、仮に1番手が優勢の状況だったら、4番手に渡す選択をされても仕方ありません。このような状況で牛歩するのは単に自分の手を遅らせるだけで不毛なので、予定通りに出荷したほうがマシだということです。もしかしたら3番手も自分の戦略を優先して出荷してくれるかもしれませんしね。

さらに一つ意地悪な例を挙げると、上記より一点だけ変更して4番手はGの位置におり、あと1手で出荷しなければならない状況だったとします。これなら大丈夫・・と、喜んで1番手が出荷したら、なんと!2番手がゴール直前に建物を建ててしまいました。これを見た3番手はトップの1番手にカウボーイを渡すまいと出荷を見送り、4番手は2番手の建物を利用して牛歩することで、無事恵みのカウボーイに有りつけることができましたとさ。めでたしめでたし。・・といったような特殊な状況も起こり得ます。トップの止めるための妨害手段として覚えておくと、そのうち役に立つかもしれません。