都道府県連合パズル・ゲーム研究室

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グレートウエスタントレイル:基本戦略考察7【私有建物の評価】

グレートウエスタントレイルのゲームシステムの中で、建物は特に大きなウェイトを占めている要素です。使える私有建物の種類によって有効な戦略も変わりますし、自分の戦略のみならず対戦相手の戦略とも密接に関わってきます。

使用する私有建物のラインナップ(aかbか)をゲーム開始前に決めた時点で、それらの建物を使ってどんなことができるのか、注意すべき点は何か、どの戦略が一番強そうか・・などを事前にイメージできるようになると、ゲームを有利に進められます。特に完全ランダムで決める場合は、強い戦略が偏ることも多いのでなおさらです。(※1

とはいえ、建物が10種類もあると、慣れないうちはすべての効果(やコンボなど)を適切にイメージするのは難しいかもしれません。なので本記事では、一通り私有建物の特徴を見ていった上で、最終的に考えるべき要点を絞ったかたちでまとめられればと思います。


では、順番に見ていきます。

1a1b
緑の手形のある通行料建物。最初に先手で建てて、うまく妨害できれば優位に立てる。特に2コインを得られる3人戦で強い。ただし、他に建てたい建物があるときに妨害を優先すべきかは微妙で、過信は禁物。他のプレイヤーの初期位置が決まったあとの下位番手のほうが妨害しやすい場合もある。10aを目指すときは、良い踏み台になる。(4人目の職人を雇ったときの即時効果+1回の改築でちょうど到達できる。)

建物による妨害を考えるときは一応、初期+予見の災害タイルのめくれ方により、妨害可能な地点が何ヶ所あるのかを確認しておくとよい。1ヶ所しかないなら優先度は上がるし、複数あれば急がずに他の事を優先しようという指針になる。

アクションの効果は、1aは森に3つくらい建物を建てれば中盤以降のお金がないときに普通に使える。ただ計画的に狙うほどではなく、いざという時にお金が入るように可能なら建物は森に建てる・・くらいのスタンスでよいと思う。1bはちょっと使いづらそう。目的カードを捨てての2証明書も、中盤以降に踏むアクションとしては弱い。


2a
カウボーイ戦術のお供。これを建てると共有建物Eと合わせて1巡するうちに2回牛が買えるため、どんどんデッキが強化されていく。最初にカウボーイを2人雇えば、デッキシャッフルが入るまでに「4牛1枚+3牛2枚」を入れられて強い。4aがある環境では、災害タイル先(コンボ前提で落石か洪水)に建てるのもオススメ。ここで証明書を増やせばシャッフル直後の黒枠マスディスク解放がほぼ確実になる。白牛を捨てて4コインを得られる効果もシンプルに強力で、技師中心で1~2回しか踏む予定がない場合も手札の状況次第では建ててよい。


2b
序盤であれば踏む価値はあるが、2aと比べると見劣りする。より強力な3bや4bにアクセスするためのつなぎの建物という印象。


3a
繰り返し使いたい建物の直前に建てると、デッキを回転させながら手数を消費せずにお金を得られる。序盤から使い勝手の良い建物。ただしデッキを強化する戦略の場合、ゲームが進むにつれて手札に同じ色の牛がそろいづらくなって価値は減少していく。


3b
3aと似ているが、こちらは補助アクション2回。3aとは違って補助アクションの充実してくる中盤以降のほうが強くなる。手札を捨てる必要がないので災害タイル先に置いても生きる。万能だが、所詮補助的な効果なのでより上のレベルに有効な建物があればさっさと改築してしまってよい。必要職人数が2のため、職人を雇わないと少々建てづらい。実際、無理に建てる必要はない。

特殊な状況として、補助アクションのできる共有建物D,Gがルート終盤になく、かつ4bも使えないときには、出荷直前の手札入れ替えのために貴重な働きをする。


4a
手数を消費せずにやや安く災害タイルを取れる建物。4aのある場では相対的に災害タイルが溜まりにくく、災害タイル先の建物スペースの価値は高くなる。低コストの割には序盤からは活かしづらく、中盤から終盤にかけて有効な建物。牛に度々お金が必要になるカウボーイ戦術よりも、技師戦術のときに使うメリットがある。10aとコンボして移動し、出荷を加速するかたちは強力。

またそれとは別に、4の建物は黒の手形があるので、特に4人戦では強力な妨害効果を発揮する。タイミングが合えば、通行料の徴収を主目的として建てるのも悪くない。


4b
カウボーイ戦術における出荷加速マシーン。手札を大きく入れ替えて育種価を上げつつ移動できるということは、実質証明書を得ながら移動しているのと同じで非常に強い。これがあるだけで、カウボーイ戦術側は牛を買って出荷を繰り返しているだけでもどんどん得点が伸び、あっという間にゲームが終わる。建てる場所は、ゴール近くのFとGの間の2ヶ所がベストで、次点がゴール直前の2ヶ所。1回で建てられなくても場所は優先的に確保したほうがよい。ライバルがいる場合は2ヶ所の並列地点を互いの4bで埋めることで、それ以外のプレイヤーに対してロックをかけることができる。(必ずどちらかのプレイヤーに通行料を払わなければならないということ。)

また別の使い方として、職人雇いから速攻で建て、3歩移動をうまく利用して序盤の出荷を加速することで、効率的に構築を進められる場合がある。その際、通行料建物としての妨害効果を発揮できるとなお良い。まだ建物が少ない序盤での3歩移動は大きく、とても早く歩を進められるのを実感できる。このケースではゴール手前での運用は難しいため、主に技師戦術側の立ち回りである。カウボーイは雇わないので、4bはあとでより上のレベルの建物に改築するとよい。


4の建物はa,bともに個性が強く、ゲーム展開を大きく左右すると思われる。


5a
効果は強そうなのだが、コスト的に中途半端で活かしづらい印象がある。より強力な10aや10bを先に建てたい中で、その流れと噛み合わない。早期に職人を3人にして建て、10a・10bの建設に活かす流れを作れれば強いが、並行して技師雇いも必要なことを考えると、労働市場に技師や職人が潤沢にありかつ金運にも恵まれるという限られた状況でないと、序盤から使っていくのは難しいと思われる。10の建物を建てたあとで建てて、1~2回使えるだけでも悪くないかもしれない。実際、技師の人数分列車を進める効果は終盤になるほど強くなる。駅長タイルの獲得とは特に相性が良い。技師3人のときに4人目を雇ってから列車を進めて即駅長にすることもできるし、逆に先に列車を進めて4人目の職人や技師を駅長にしてからすぐに雇いなおすこともできる。カウボーイ戦術のときに建てる意味はまず無い。


5b
5a同様に技師戦術側の建物だが、5aと比べるとやや見劣りする。技師を最大まで雇ってようやく元が取れるくらい。いざ建ってしまえば流れで踏んだほうがよい場面はありそうだが、無理に建てる必要はない。


6a
黄牛さえ捨てられれば大量にお金が入るという、わかりやすい爆発力重視系の建物。一番活きるのは、圧縮して常に1枚の黄牛を手札に引けるようになっているデッキのとき。運用を考えるなら、建物とデッキを合わせた計画的な構築が必要。得られるお金は拡大再生産に使うのにも終盤の寄せの一押しにも十分で、2回程度踏めれば元は取れていると思う。実際、そこまで早く建てても確実に黄牛を捨てられる保証はないため、10aのような強力な建物を狙うならそっちが先でよい。性質上、カウボーイ戦術のときの使い道は乏しい。

一つ注意点は、6aを利用する人がいると住居タイルが取られづらくなり、他のプレイヤーも金策をしやすくなってしまうこと。2人いるとさすがに残りのプレイヤーはかなり楽になる。逆を言えば、共有建物Dがゴール直前の止まりやすい位置にあるなど、住居タイルが溜まりにくい状況のときに特に6aは活きる。


6b
目的カードが手札に入るという、一風変わった効果。目的カードはそう何枚も取りたいものではないので、より上のレベルの建物へのつなぎとして1~2回使えればよい程度の役割。すぐに目的カードの即時効果を得られるので、それでうまい具合にすり抜けられると伸びれる。ギリギリお金が足りたり、列車を進めることで他プレイヤーに先んじて駅長タイルを取れたり・・など。特に列車を3歩進められる効果は目的カードの中でも強力なので、めくれている場合は有効に活用したい。達成できそうにない目的カードしか場にないときは空気。


6の建物固有の特徴として見逃せないのが、必要職人数が4であること。6aと6b以外に必要職人数4の建物はない。必要職人数8の10bを建てる際に、まず4人目の職人を雇ったときの即時効果で必要職人数4の建物を建て、それをすぐに改築すると無駄がなくてスムーズ。つまり6の建物は10bへの踏み台として貴重。言い換えれば、6aや6bを10bと両立させるのは難しい。(その必要もない。)


7a
住居タイルによる金策が継続的に必要な戦略のときは、ゲーム終盤に強くなる。10aがある場合は不要だが、ないときは終盤に建てて1~2回使えるだけでも悪くない。青緑2セットで4コイン+4証明書が得られれば十分。どうしても片方の色に偏りがちのときは泣く泣く安い住居タイルを取らなければならない場面もあるが、住居タイルが溜まっていない序盤から7a利用を見越して無理に住居タイルを集め始めるのは弱いので注意。


7b
ほぼ妨害建物としての意味しかない。森の数だけ・・の効果は、率直に言って1aよりも弱い。


7の建物は、3コインの通行料徴収という最も強力な妨害効果を有している。しかし妨害効果も強すぎると、災害タイル側へ迂回されてしまうことになるため活かせる場面は少ない印象。また、必要職人数が多いために計画的に場所を押さえるのが困難なのもある。利用可能なら建物の得点行動のついでに使っていくくらいのスタンスでよいと思う。うまく嵌れば1手平均2コインくらいは生んでくれる。4aがないとき(すなわち4bのとき)のほうが、災害タイルが溜まりやすくて活かしやすいかもしれない。

次の8aも合わせて必要職人数5の建物は、必要職人数9の10aを建てる際の踏み台になる。理屈は10bのときと同様だが、先に必要職人数1の建物を建てておく必要がある。


8a
住居タイルが溜まっている状況でないと、アクションとしては弱い。高コストの割にどれも効果は共有建物で代用可能・・と、あまり積極的に運用する価値を見いだせない建物。10aへの踏み台としては、住居タイルがそろっていなければまだ7aよりは使えるため、スムーズに改築できずに一度踏める状況になったときには選択肢になる。


8b
場に大きな変化をもたらす建物。建物の持ち主にかかわらずアクション内容をコピーするため、これがあると建物建設における場所取りの駆け引きが激しくなる。(プレイヤー全員がそれを分かっている場合の話。)下手な場所に強い建物を建てると、隣りに8bを建てられて漁夫の利を与えてしまうことになる。

原則的にはコピーする建物の効果が強ければ強いほど有効で、その最たるものは10aと10b。10aは出荷を挟まずに2回踏んでも(既に証明書が最大で)意味がないから他プレイヤーの隣り限定。10bなら何度踏んでもおいしい効果なので、自分の10bの隣りに8bを建てるコンボは非常に強力。先に将来の8b予定のスペースを低コストの建物で確保し、そのあとで隣りに10bを建てることにするとより安全。

10b+8bのコンボを狙う際に最も妨害を受けにくいのは建物タイルの空きマスが3つ連なっている所の真ん中(AとBあるいはBとCの間)だが、ここはコンボを狙わないプレイヤーでも先んじて通行料建物を建てる価値がある。そうすることで選択肢が減り、コンボの成立を遅らせたりうまくいけば阻止することもできるため。その過程で職人を多く雇っているプレイヤーの建物の隣りのスペースをいくつか押さえておけば、そのプレイヤーが10bを建ててきたときに隣りを8bに改築することで、漁夫の利を得られる可能性が高まる。むろん、10bよりも8bのほうが安いのでコスト的には得をしている。逆にコンボを狙っている側にとっては、漁夫の利を完全に防ぐことは困難なので、早期にコンボを成立させられるなら目をつむるのが肝心だと思う。潰し合いが激しくなると、相対的に関わり合いのないプレイヤーが有利になってしまうため。

このように、8bに加えてさらに10bまであると、建物の建設スペースの価値基準が大きく変化するので要注意。とりあえず森に建てとこう・・とか、そういう感じではなくなる。なお、10aと10b以外を積極的にコピーしにいくメリットはあまりないと思う。そもそも8b自体の建設コストが高いのもあるし、そのためのお金と手数は他の事に使ったほうが伸びると思われる。


9a
列車が進んでいれば、戻すことにより(出荷の)大量得点を得られる建物。列車自体は最後何の得点にもならないため、これで得点に換えられるとおいしい。後ろの駅に戻してアップグレードを兼ねられればさらに得で、駅長タイルが残っているときは特に狙い目。通常は技師戦術のときに、終盤に建てて1~2回使うのが目安。列車を進ませつつ繰り返し使うのは、単純計算でも1手4~5点程度(サンフランシスコの9点/(列車を進める2手+9aの1手)=3点。列車を進めると同時に取れる目的カードや証明書(C)、補助アクション(G)の分を1~2点と見積り。)だからそこまで効率は良くない。それなら列車を進めるだけ進めて奥の駅を取りにいき、最後に1回だけ使ったほうがよいと思う。10b+8bのような手数を消費せずに列車が大量に進む体制になっていれば例外だが、そもそもこの2つを優先すると9aを建てる頃にはもうゲーム終盤になっており、使えて2回がいいところ。


9b
9a同様、技師戦術側の終盤系の建物だが、得られるのは駅の得点だけなので、9aと比べると出力は落ちる。駅長タイルが残っていると有効度が増すのは9aと同じ。メリットとしては技師をたくさん雇っているけど駅が1歩だけ先にあるような、無理に駅に止まると効率が悪いときにもスルーしてどんどん列車を進めていけること。また、他のプレイヤーに駅を塞がれていてもあとから取れるので、同程度に列車を進めているライバルがいるときには特に活きる。いずれにしても、後で取る予定の駅と合わせ、どのタイミングで建てて何回使う予定なのかはあらかじめ計画しておきたい。駅にはお金もかかるため、いざ使おうとしたときにお金が足りない事態には注意。


10a
最強の建物その1。証明書最大+5歩移動は非常に強力で、遠くへの出荷を一気に楽にしつつ加速してくれる。狙うならなるべく早く建てたい。4aや4bと組み合わせると、他のプレイヤーの建物状況によっては毎ターン出荷する戦術も可能になるが、妨害も容易なので3~4人戦では2手かかると考えるのが無難。列車を進めないまま速攻で建てると、出荷の際の輸送費をたくさん取られて他の得点手段が阻害され、大きく戦略の幅が狭まる点は要注意。その状態のまま走りきって勝てる可能性もゼロではないが、一般にはカウボーイか技師のどちらかと組み合わせることが必要。技師で列車を進めつつ早期に建てるパターンは普通に強い。ゲームを長引かせたいときは、移動効果は少ししか使わずにあえて出荷を加速しない手もある。この建物があると、他に証明書を増やす手段は一切要らなくなる。7aのような建物も、10aを建てるための踏み台でしかない。


10b
最強の建物その2。手数を消費せずに即座にお金が入り、列車が進むことで将来的にも(出荷で)お金が入ってくる。このように継続的にお金を得られるのは10aにはないメリットで、10aとは違い列車を進めないまま速攻で建ててもその後の発展に支障がない。むしろ技師を雇わなくても列車を4歩も移動できるわけで、10bのある場では相対的に技師の価値が下がる。10bを建てたあとは安くなった技師を雇ってさらに列車を進め、駅長タイルや奥の駅を目指すのもよいし、カウボーイを雇って牛を買い、デッキ強化しつつお金を得点に換えていくのもよい。とにかく10bを狙う場合は、まず真っ先に建てるのが吉。ただしみんながそれを狙うと序盤の職人が辛くなり、なかなか4人目を雇えずに遅れてしまう場合もあるので要注意。これはかなり痛い状態なので、競合が激しそうなら参入しないほうが無難かもしれない。

技師方面の戦術を選択した場合は証明書を増やす手段が必要になり、そこは10aのときにはなかったデメリット。7aのような建物を利用しない限り、補助アクションが主体になる。その場合は頻繁に列車を戻す必要が生じるわけで、同じく列車を戻さないといけない圧縮戦術とは相性が良くない。すなわち、10bがあるときに圧縮によってデッキ強化するのは厳しく、専らデッキ強化はせずに進めるのが最善だと思われる。言い換えれば、デッキ圧縮は10aのとき限定の戦術である。

単純な強さだけ10aと比較すると、コスト通り若干劣る印象だが、前述の通り10bは8bと組み合わせるコンボが非常に強力で、8bのある環境下では10aを凌ぐ強さがあると思う。

 

以上、長くなりましたがこれらの中から特に重要なポイントを抜き出すと、ラインナップの中で最も注目すべきは4の建物と10の建物、次点が2の建物と8の建物・・という具合になるのかなと思います。以下、まとめです。


・4aがあると技師戦術に有利。

・4bがあるとカウボーイ戦術に有利。

・4aがある場では災害タイル先の建物スペースを利用しやすい。逆もまた然り。

・10aは技師から入ったときに、列車を進めつつ早期に建てる。

・圧縮戦術が選択肢になるのは、10aのときのみ。

・10bがあると技師の価値が下がる一方で、序盤の職人が辛くなる。

・10bは狙うなら真っ先に建てる。序盤の職人争いが厳しそうなら無理に狙わない。

・8bがあるときは10bが強化される。

・2aがあるとカウボーイ戦術に有利。逆もまた然り。


結局まとめとはいえかなり項目が多くなってしまいましたが、ゲーム開始時にこれらの点を意識するだけでも、どんな戦略が強そうかについて結構見通しが良くなるのではないでしょうか。


なお、将来的に私有建物の拡張セットが出てくると、有効な戦略はどのようにも変わり得る可能性があります。それは想像する限り大変魅力的なもので、筆者も心から期待している次第です。実は個人的に考えているものもあったりします。グレートウエスタントレイルファンの皆さんも、心のままにいろいろ新たな建物の効果を考えてみてはいかがでしょうか。(^-^)/

 

  ※1:ルールブックの記載上は、すべての私有建物をaかbのどちらかの面に統一することが奨励されているように見えます。筆者もその状態が一番バランスが取れていると考えます。