都道府県連合パズル・ゲーム研究室

パズルやゲームに関する研究結果をアップしていく予定です。

ナショナルエコノミーソロ(理論値パズル)の感想・解説

解答へのリンク  ⇒  ナショナルエコノミーソロ:理論値への挑戦【470点】


初めにお断りしておきますが、私はこれまで他にカヴェルナ以外のゲームソロはやったことがないので、どうしてもカヴェルナとの比較が多くなります。ご容赦ください。

そんな経験が浅い中でも、とにかく面白かったというのがまず率直な感想です。面白い理由を一言で表すと、「無駄のない考えどころの多さ」だと思っています。具体的には、以下のような事になるでしょうか。


・レベル設計の絶妙さ
→ ボーナス点系の建物をすべて生かしきるのは難しいが、不可能ではない絶妙なラインに調整されている。

・手数効率の考えづらさ
→ 手順が得点につながるまでに手札(ドロー)を介するため、手数効率を考えるのが難しい。ある1手はほとんど得点を生まないけれども、次の1手で大量得点を生むという状況が日常的に起こる。

・増員のメリットバランス
アグリコラやカヴェルナとは違い、ナショナルエコノミーでは必ずしも増員が強くならないように設計されている(と思われる)。

・公共職場が埋まっていくルール
→ このルールがあることにより、下手に建物を売ってしまうと使えないタイミングが出てきてしまうため、多くのパズル的な要素が生まれる。建物の使用順序を考えたり、売却タイミングを調整したりなど。かなり難易度を上げていると思う。


最初の一つ目を除いては、理論値パズルではない本来のソロゲームでも当てはまっている事ですね。ここまで良いバランスに調整されているのは、見事としか言いようがありません。

理論値パズルについては、やはりカードを自由に使えることによってスケールが大きくなる印象ですね。初めはカヴェルナソロよりも規模は小さいと思っていたのですが、プレイしてみて必ずしもそうは言いきれないな・・と。さすがにできる事はカヴェルナより少ないと思うのですが、カヴェルナでは初めからアクションの順序が決まっているのに対して、ナショナルエコノミーはそうではなく自分でアクションを作り出していく必要があるので、この点が難しいのだと思います。建物の種類自体はカヴェルナにおける部屋と比べると少ないので、最終的に狙うべき得点ソースを考える部分はそこまでの複雑さはないでしょう。

 

感想はこれくらいにして、ここからは具体的な解説に入ります。特に難しいのは序盤から中盤にかけての動きだと思うので、その辺りを中心に。

ナショナルエコノミーで得点を伸ばすためには、序盤から下記の4点を迅速に、かつバランス良く発展させる必要があると思います。

① 増員
② ドローソースの充実
資金源の確立
④ 建設基盤の確立


逆を言えば、これらすべてを両立できるルールになっているので、それが難しいと思っています。例えばカヴェルナでは増員はステージ2以降でないとできないので、細かい手順はともかくとしてそのための段階の踏み方自体は絞られますが、ナショナルエコノミーではそこから考え始める必要があります。①~④ のどれが欠けても得点は伸びないので、どの順番で、どれを優先して・・など、考えどころは尽きません。

以下、順番に見ていきます。


① 増員

人員は増やしたほうができる事が多くなるのでなるべく早く増やしたいですが、支払う賃金に見合うアクションが残っていないと弱い、というのが実態だと思います。なので、建物を建てて強いアクションを作り出しながら増員していく必要があります。(すなわち ②,③,④ との両立)

非常に狭き門ですが、ナショナルエコノミーにおいても早期増員が強いのは例外ではなかったようで、ラウンド1から連続で増員していくルートが一番伸びました。最速でラウンド4に6人にし、そのまま突っ走ります。本来は2件目の社宅を建てて7人を目指したほうが強いと思うのですが、②,④ との両立が微妙に難しいのに加えてドロー数のあやもあり、かえって得点が減ってしまう結果になりました。(参照:エクセルファイルの456点と457点の解答が、7人にした場合です。)

序盤の増員を考える上で一つ注意しなければならない点は、毎ラウンド連続で増員する場合、増員の遅れはそのラウンド数分の手数の差になるということです。極端な話、ラウンド1~5まで連続で増員するのとラウンド2~6まで連続で増員するのとでは、5手の差が生まれます。なので、例えば1ラウンド先のみを考えて、「鉱山に2回通う必要があったら農場1回とドロー数的には等価だから、増員は遅らせたほうが得。」という結論を出すのは間違いです。


② ドローソースの充実

カードは建設にも資金調達にも必須なので、重要です。つまり、まず最低限のドローソースを確保する必要があるという点で、③,④ よりも優先されます。ドロー系の建物は種類も多いですが、最も強いドローは(差し引きで)4ドローなので、最初に作るべき建物としては手軽な果樹園か、化学工場が有力でしょうか。果樹園は化学工場よりもコストが安い分初速は出ますが、次の建物を引くために鉱山に通わなければならないのがデメリットです。

2件目は自動車工場を建てて、安定した+4ドローが確保できればベストでしょう。私はこれが可能なのを見落としていて、間に一回3ドローを挟んでいたためにしばらく伸びませんでした。3ドローを挟む場合は、コストパフォーマンスの良い農場系を交えて【果樹園+製鉄所】または【化学工場+大農園】とするのが相性良さそうです。


資金源の確立

アグリコラやカヴェルナでは飯基盤にあたる部分です。資金を得る系の建物は珈琲店とレストランがありますが、珈琲店は弱いのでレストラン一択でしょう。公共職場も序盤に登場する露店と市場はレストランの下位互換なので、通っているようでは弱いと思います。最終的にはレストラン2件体制にして安定させたいところです。

ここで注目すべき点は、資金調達行動は手数もコスト(手札)もかかるのに対して、建物を売却する場合はどちらもかからないということです。また、建物の売却は家計を増やすためにある程度は必須です。

この事から、序盤の資金は極力建物の売却によって得ることにし、資金調達行動は後のラウンドに回したほうが、基盤作りに手をかけられるので有利なことがわかります。また、副次的な効果として早めに建物を売却しておくと、後々のラウンドでゆっくり入れるメリットもあります。売却直後に入りにくくなるデメリットだけは、うまく順序を考えるなり一時的に諦めるなりして享受します。

負債についても法律事務所という建物がある以上は、ある程度取ってしまって問題ないと思われます。どのくらいまでなら良いのかのバランスは実際に試して確認する必要がありますが、プレイした限り負債はあまり気にせずに基盤作りに手をかけたほうが強そうです。

まとめると、序盤に資金調達行動をしない以上は、レストランの建設は ①,②,④ と比べると後回しでよいことになります。


④ 建設基盤の確立

ナショナルエコノミーにおいて、最終的に得点になるのはほとんどが建物です。建物を作れる公共職場は大工しかなく、これだけでは有効な得点行動を重ねられないため、新たに建設機能を持った建物を作る必要があります。

これらの建物は3種類ありますが、その中では二胡市建設がダントツで強いので、二胡市建設の早期稼働を目指します。他の2つ(建設会社,ゼネコン)を作らないとドローソースを消費できない状況になってしまうようでは弱いと思います。

模範解答ではラウンド4で建設して使用を始めています。二胡市建設は早ければ早いほど強いですが、建設後の投入資源を確保するためのドローソースも重要なので、このくらいが限度かなと思います。ラウンド4で社宅を建て、ラウンド5で一気に「レストラン×2」として資金源を確立するに至っています。

序盤に作る以上、即売却は免れないので、その時にちゃんと次ラウンドの早めの手で通えるように資材(手札)を確保しながら立ち回ることが重要です。二胡市建設だけを売却すると通えるのは2手目までですが、他の建物も一緒に売却すれば3手目でよくなるという手筋もあります。実際、模範解答のラウンド5では3手目でないと難しいため、ラウンド4で「社宅×2」とせずに片方を工場にして売っています。これにより、スムーズに7人まで行けなくなりますが、二胡市建設の使用回数が減るのと比べればデメリットは小さいと思います。

最終的には二胡市建設2件体制にして、得点系の建物をガンガン作っていきます。

 

以上の考察をふまえて考えると、次のような流れがベストでしょうか。

・① の増員は可能な限り最優先。

・②~④ の優先順位は以下。
 ・最低限のドローソース(②に着手)
→・二胡市建設(④に着手)
→・レストラン×2(③を一気に確立)
→・自動車工場+二胡市建設(②,④を確立)


このようにして基盤が完成した後は、主に下記の3点に注意しながら手を進めることになるでしょう。

・得点が少しでも高くなるように作る建物を選ぶ。
・得点が少しでも高くなるような資金調達行動を取る。
・得点が少しでも高くなるように売却する建物を選ぶ。


得点系の建物の評価については、ここでは割愛します。おそらくカヴェルナとは違ってシンプルなので、損得勘定は比較的容易なのではないかと思います。コストも手札に一元化されておりますし。

 

長くなりましたが、解説は以上です。ナショナルエコノミーを紹介してくださった方には、この場を借りて感謝申し上げます。他にも面白いソロゲームを知っている方は、ぜひ教えていただけるとありがたいです。^^